誰もが善い行いをしたくなる組織をつくる方法

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善意に基づく経営は差別化や競争優位につながる、と主張するテイラー。その例として、「アメリカで最も便利な銀行」を標榜するTD銀行(旧コマースバンク)を取り上げる。「よい行いをしている人を見過ごさない」ことが、善意ある組織を築くカギとなる。


 前回の記事にお寄せいただいたコメントの多さには驚いたが、半ば予想はしていた。“It’s More Important to Be Kind than Clever”(企業の「ちょっとした親切」になぜ注目が集まるのか」と題したその記事では、パネラ・ブレッドの店長が闘病中の顧客に示した温かい思いやりと、それがソーシャルメディアで大きな反響を呼んだことを紹介し、2つの素朴な問いを投げかけた。「ビジネスの世界で思いやりを示すことが、なぜこれほど難しくなっているのだろう? ささやかな思いやりさえ珍しいものになっているとしたら、私たち職業人はどうなってしまったのだろう?」

 この問いは、明らかに読者の関心をとらえたようだ。私たちが日々のビジネスで、当たり前の感情やささやかな心配りをいかに忘れているか、それはなぜなのかについて、コメント欄では何週間も議論が続いた。前回にも述べたように、技術の絶え間ない進歩によって形を変え続ける世界では、人間らしさを思い出させてくれる親切や結びつきは人々の注目を集めるのだ。

 そこで、今度は次の問いを投げかけたい。いまでは珍しくなってしまった「当たり前」の振る舞いを、ビジネスリーダーはどうすれば推進して広く根付かせることができるのだろうか? より親切な組織となるように、リーダーが取るべき賢い方法はあるだろうか?

 もちろん簡単に答えが出るような問いではない。しかし私がリーダーに勧めるのは、誰に接しようとも、相手のよい部分を引き出そうという意図を持って行動することだ。つまり、ミスを犯した者への叱責、批判、指導に費やす時間を減らし、皆に望まれるような振る舞いをする者を見つけほめ称えることに、もっと時間を使うのだ。

 部下のあら探しに余念がない上司は、血も涙もないやり方が横行する社風をつくりがちだ。一方、小さな親切を称え、人同士のつながりを評価し見返りを与えるリーダーの下では、人に純粋な親切を施す機会を誰もが探すようになる。

 私が最初にこの教訓を学んだのは、コマース・バンク(現在はトロント・ドミニオン〈TD〉銀行)のきめ細かい顧客サービスの文化を研究していた時だった。リテール・バンキングほど人間らしさからかけ離れたものはない。だがTD銀行は、数万に及ぶ窓口スタッフに、みずからの仕事を「リテールテインメント」と考えさせることによって、伝説のブランドになった。リテール+エンタテインメント、つまり本来の銀行サービスを提供するだけではなく、顧客とのつながりを大事にし、顧客を驚かせ楽しませるというものだ。ささやかな思いやりはTD銀行の日常であり、その穏やかで温かい文化は、お堅いことで有名なエコノミスト誌の記者にも注目された。

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