マーケティング・ストーリーをつくるには、
競合も巻き込め

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必ずしも自分の意識を明確にしているわけではない消費者。彼らを購買行動に導くにはマーケティング・ストーリーが必要である。ストーリーづくりは競合を排除するものではなく、むしろ巻き込んでいくものである。好評連載第3回。

 

今回はマーケティング・ストーリーの描き方について解説します。

 マーケティング・ストーリーは、「売れ続ける仕組み」をつくるうえで極めて重要な役割を果たすいわばその基本設計図といえます。

前回は、消費者の購買行動につながるカスタマージャーニーマップを描くためには、消費者が自分でも明確には意識できていない〝欲求・願望〞を探ることが重要だと述べました。また消費者の「意識」と「行動」のギャップについても記しました。

 消費者インサイトの探索なくしてマーケティング・ストーリーは描けませんが、彼らは企業から発信される広告や自社サイトから発信されるメッセージだけを見て購買を決めているわけではありません。多様な他の情報接触経路も考え、購買に影響を与える様々なステークホルダーからも理解を得られるメッセージへと昇華させていく必要があります。

マーケティング・ストーリーに欠かせない物語性と文脈

 ここで、そもそもストーリーとは何か、について触れておきます。

『ストーリーとしての競争戦略』(東洋経済新報社)を著した一橋大学大学院国際企業戦略研究科・楠木健教授は、同書で、

「その戦略にかかわる社内外の人々を面白がらせ、興奮させ、彼らを突き動かす力をもっていること、これは戦略が成功するための絶対条件です」

「優れた戦略とは思わず人に話したくなるような面白いストーリーだ」

 と書いています。

 楠木教授の指摘の通り、「ストーリー」を理解する1つ目のキーワードがナラティブ(narrative:説話の、物語体の )です。思わず人に話したくなる物語性をもった「ナラティブ・ストーリー」(narrative story)を描くことが大事です。

 もう1つのキーワードがコンテクスト(context:文脈)です。消費者の心の深層にある〝欲求・願望〞を探り当てて、商品ブランド(または企業ブランド)との間に豊かな連想のコンテクスト(文脈)を創り出していくことがマーケティング・ストーリーの役割といえます。

 消費者は、ある商品を買うまでに多様な接点(マスメディア、ソーシャルメディア、企業webサイト、店頭など)で、多様な情報(広告、番組・記事、口コミ、店員のトーク)と触れており、それらが消費者の頭の中で積み重なりマッシュアップされて文脈が形成され、購入を決定しています。消費者の心のなかに自分自身の〝欲求・願望〞から商品ブランドへと結びつく生き生きとした豊かな文脈が形成されたときに購買行動が生まれるのです。

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