メリット重視かリスク回避か:
「モチベーションの一致」が満足を生む

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人が商品やアイデアを選ぶ動機は、大きく2つに分かれるという――利得の獲得か、損失の回避だ。売り込む側のメッセージが受け手のモチベーションと一致している場合、メッセージの成果が格段に高まることが実験によって示された。


 マーケティング担当者は誰でも、人々が「よいもの」(よい製品、よい体験、よいアイデア)を求めていることを知っている。しかし彼らが知らないであろうことがある。実験系心理学者が20年以上前に発見した(そしてほとんど公表してこなかった)こと――すなわち、「よい」には2つの種類があり、それらは根本的に異なるという事実である。売り込みたいのはどちらの「よい」なのか。その種類に合致するかたちでメッセージを組み立てれば、消費者の信頼と関心、メッセージの信憑性、そして知覚価値を高めることができる。「よい」の種類に合っていないメッセージは失敗に終わることになる。では、人々はどんな「よい」ものを望んでいるのだろうか。

 一部の人々は、「獲得」や「進歩」を目標とする傾向がある。つまり、目標を達成した時に得られるメリットや報酬を重視するタイプだ。心理学者はこれを「促進型モチベーション」(promotion motivation)と呼ぶ。研究によれば、促進を求める人は楽観主義や称賛によって活気づくことが多く、リスクを恐れず、チャンスを逃さず、創造性や革新性に富むといった傾向がある。

 一方で、「損失の回避」や「安定」を重視する人々もいる。頑張って獲得したものを失うことを嫌い、失敗によって降りかかる災難を心配する。心理学者はこれを「予防型モチベーション」(prevention motivation)と呼ぶ。予防を重視する人々は、称賛や明るい展望よりも、批判や失敗の危険性に対して敏感に反応する。リスクを嫌うが、仕事ぶりは綿密かつ正確で、慎重な計画に基づいている。

 モチベーションの種類が異なるのは、なにも人間ばかりではない――製品、活動、アイデアにも、同様の特徴が見られることがある。わかりやすい例として、シートベルトや住宅用防犯システム、マンモグラムなどは本質的に、損失を避けるためのもの(予防的)である。一方、別荘や宝くじ、美容整形は、潜在的な利得に関するもの(促進的)である。また、説明のしかたによって促進と予防のどちらにもなるようなものもある。練り歯磨きなら、「白い歯で素敵な笑顔」と言えば促進志向になり、「虫歯を防ぐ」と言えば予防志向になる。

 製品や受け手のモチベーションに合うようにメッセージをつくることで、より効果的なマーケティングが可能になる。モチベーションと一致させる方法はいくつかあるが、最もよく研究されているのは、利得/損失フレーミングである。

 促進型モチベーションを持っている人は、利得に関する情報に敏感で、強く影響される。研究によれば、促進志向の人(または促進的な製品やアイデアを検討している人)は、製品によって得られるメリットを強調されると、より強い関心を持つ。予防型モチベーションの場合も同様に、損失の回避を強調すると効果が高い。

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