「新結合」でビジネスモデル・イノベーションを起こせ

実践!ビジネスモデルをデザインする(後半)

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基本パターンの組合せだけでも、ビジネスモデル・イノベーションは起こせる

 これまで、ビジネスモデル・キャンバスとピクト図解の2つを「共通言語」として使い、チームで対話しながら、ビジネスモデルをデザインする手法をご紹介してきました。最初から完璧なビジネスモデルをつくろうとするのではなく、ビジネスモデルの「プロトタイプ」を大量につくり、それらを「レゴ」ブロックのように組み合わせることが重要でした。

 経営学者の野中郁次郎氏(一橋大学名誉教授)は、組織的知識創造理論において「SECIモデル」を提示しています。
 個々人の体験による暗黙知を伝達し(共同化:Socialization)、獲得した暗黙知を共有できるよう形式知に変換し(表出化:Externalization)、形式知を組み合わせて新たな形式知を創造し(連結化:Combination)、それらを個人が実践して体得する(内面化:Internalization)――これが、SECIモデルの知識創造プロセスです。
 ビジネスモデル創造におけるプロセスでは、ビジネスモデル・キャンバスとピクト図解は「表出化」と「連結化」で活躍します【図4】。

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【図4】ビジネスモデル創造のためのSECIモデル

「表出化」とは経験知、暗黙知を「見える化」することにほかなりません。この点、ビジネスモデル・キャンバスとピクト図解は一定の表記ルールによってビジネスモデルを「見える化」し、形式知化するものと言っていいでしょう。 また「連結化」とは、複数のビジネスモデルを組み合わせることによって新しいビジネスモデルを生むことだと言い換えることができます。iPodでビジネスモデル・イノベーションを起こしたスティーブ・ジョブズは、「創造性とは物事を結びつけることにすぎない」といっています。

 ビジネスモデル・デザインというと非常に高度なスキルが求められるように感じるかもしれませんが、基本的なパターンを身につけてそれらを組み合わせれば、発想が広がり、新たなビジネスモデルが生み出せるようになるものなのです。スティーブ・ジョブズのような天才でなくても、方法論さえマスターすれば、ビジネスモデル・イノベーションは組織やチームで起こせると私は考えます。

 5回の連載を通して私がお話ししてきたことは、そのためのトレーニングメニューです。
最近、教育機関でもビジネスモデル・デザインに対する関心が高まってきており、大学や商業高校でピクト図解を使った実践授業が始まっています。教育機関向けの資料を公開していますので、「ビジネスモデル教育」に興味関心のある方は、『<教育機関向け>ピクト図解入門 ビジネスの仕組みがスッキリわかる!』をご覧ください。

 最後になりましたが、私はビジネス・プロデューサーとして仕事をする際、「実行し、成果を上げられない理論やアイデアは無用の長物である」ということを常に意識しています。どんなにすばらしい青写真を描いても、それがお手伝いする企業において実現不可能なアイデアや提案では意味がないからです。本連載はこの観点に基づき、理論に走るのではなく、読者のみなさんに現場の実務で役立てていただける内容であることを大前提に置いて書いてきました。
 日々身の回りのビジネスを「ビジネスモデル・キャンバス」と「ピクト図解」の2つでビジュアル化し、頭の中にビジネスモデル・パターンを蓄積して「ビジネスモデル思考」を鍛えてください。きっと、いままでとは違う視界が開けてくるはずです。(了)

 

板橋 悟(いたばし・さとる)
1963年生まれ。「ピクト図解」考案者。エクスアールコンサルティング株式会社代表取締役、エデュテインメント・ラボ代表。東京工業大学理学部物理学科 卒業後、リクルートに入社。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)に社費留学。帰国後、KIDS向け教育(エデュテインメント)事業を新規事業として立 ち上げる。現在はビジネスプロデューサーとして、企業の新商品開発・新規事業開発支援をするかたわら、大学生に「世の中の仕組み・儲けのカラクリ」をピク ト図解メソッドで教えている。人気マンガ「『ONE PIECE』のビジネスモデル分析」は人気講座。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)修士課程在学。著書に『ビジネスモデルを見える化する ピクト図解』(ダイヤモンド社、2010年)、『「記事トレ!」日経新聞で鍛えるビジュアル思考力』(日本経済新聞出版社、2009年)、『なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?』(主婦の友社、2011年)など。

※「ピクト図解」はエクスアールコンサルティング株式会社の登録商標です。

 

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