アナリティクスはここまで進化している

~アナリティクス実践に向けた基礎知識~

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ビッグデータを活用できれば、新たな顧客開拓やサービスの開発に繋がる洞察が得られる。そのような期待が高まる一方、アナリティクス(ビッグデータ分析)にどのように取り組めばよいか、逡巡している企業も多いのが現状である。本連載を通じて、具体事例を交えながらアナリティクス実践のために注意すべきこと、どのような組織をつくればよいかを明らかにする。日本を代表するデータ・サイエンティストによる連載、全4回。 
 

アナリティクスを活用する「夢の国」

 フロリダにあるディズニー・ワールドを歩いていると、キャストが「○○ちゃん、お誕生日おめでとう!」と声をかけてくれる。長蛇の列に子どもが疲れ始めた頃を見計らって、キャラクターがやってきて子どもを楽しませてくれる。実にディズニー・ワールドらしいサービスであるが、彼らはどうして子どもの名前や誕生日を知っているのだろうか。1時間以上も並んでいるのがわかったのだろうか。その背景にはアナリティクスの活用がある。
 実はディズニー・ワールドでは、来園者のデータ(ビッグデータ)を集中管理している。その秘密を握っているのが、2013年に導入された「マジックバンド」である。これはRFID(ICタグ)を内蔵したリストバンドで、そのセンサー情報を読み取ることで入園券やファストパス、さらにはパーク内でのショッピング決済や宿泊ホテルのキーにもなる優れものだ。マジックバンドの使用に際しては、事前に個人情報を登録することもできる。そうすると、センサーデータを読み取ったキャストやキャラクターが声をかけてくれる、という寸法だ。位置情報も取得できることから、アトラクションに長時間並んでいる顧客の識別もできる。このような来園者とキャスト・キャラクター間のOne to Oneコミュニケーションを生み出したのが、アナリティクスなのである。

「ビッグデータ」という言葉が流行し始めて早2年になるが、実際にその活用の意義を理解し、目的をきちんと定め、効果を創出できている企業はまだまだ少ない。アーリー・アダプターと呼ばれる各業界トップのIT先進企業や、新進気鋭のベンチャー企業での活用が大半、というデータもある(弊社調査より)。
そこで連載の第1回となる本稿では、アナリティクス実践の前提となるビッグデータの定義やその変遷を追い、アナリティクスが現在どのような状況にあるか理解することを目的としたい。

ビッグデータとは何か

 ビッグデータの定義については「4V(Volume(量)、Velocity(速さ)、Variety(種類)、Value(価値))」をはじめ、数多の解釈があるが、本稿では簡潔に、システム内に自動 / 手動で生成・蓄積される多種 / 多量なデータのことをビッグデータと呼ぶことにする。多種 / 多量な、と言うのは、業種・業態、さらには時代によって流通・蓄積しているデータの種類と量は全く異なるからだ。言い方を変えるならば、分析の演算処理にコンピュータの処理能力が追いついてなかったり、統計が主流を占めており、機械学習のようなアプローチが未成熟であったり、データ処理技術の未発達などの要因によって、利用されることのなかったデータこそが、今、脚光を浴びているビッグデータと言える。
 ビッグデータはさらに、構造化データと非構造化データに分類される。構造化データとは、企業内の財務データや顧客データ、販売データ等、そのデータをコンピュータで処理するために人間の手により投入されたデータが大半を占めており、フォーマットが事前に定義されているものが多い。それとは逆に非構造化データとは、動画やSNS、センサーから生成されるログデータ等、誤解を恐れずいえば、マシンや装置から絶えず生成されるデータを指す。この非構造化データは、アナリティクスのパターン認識技術により、これまで得られなかった付加価値の高い情報を取得できることが認識され始めたことから、アナリティクスの対象データとして主役になりつつある。 

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