ビジネスモデルの「プロトタイプ」を量産せよ

実践!ビジネスモデルをデザインする(前半)

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ピクト図で「ビジュアルシンキング」する 

 ビジネスモデル・キャンバスの9ブロックは、ロジカルな「整合性」をとる必要があります。この作業が意外と大変です。たとえば、1ブロックに付箋5枚のアイデアを出すと、5×9=45枚になります。アイデアを一カ所修正すると他の要素も連動して修正する必要が生じます。45枚の付箋から「整合性のとれた組み合わせ」を作るのは結構苦労します。アイデア発想が得意な人は付箋の数が100枚以上になるので、さらに難易度があがります。そこで、ピクト図解を「収束思考」として導入し、ビジネスモデル・キャンバスをピクト図に変換すると整理がしやすくなります【写真2】【写真3】。 

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【写真2】ピクト図に収束する
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【写真3】発散と収束を繰り返す

  ピクト図は手書きにしましょう。ビジネスモデルのプロトタイピングでは試行錯誤が欠かせません。ピクト図を何度も書いたり消したりすることになるので、「消せる筆記用具」を使用してください。太めの芯のシャープペンと消しゴム、消せるサインペン、消せるボールペン、ホワイトボードなどがおすすめです。

 いったん収束させたピクト図をもとに、ビジネスモデルのアイデアを再度広げることも可能です。「タイムライン」のないピクト図は、“売り切り”モデルであることが視覚的に瞬時にわかります。“売り切りではない”ビジネスモデルに軌道修正したい場合は「8+1の基本ビジネスモデル・パターン」を参考にするとよいでしょう。他業界のビジネスモデル・パターンを持ち込んで「アナロジー発想」するのも有効です。たとえば、家庭で飲まれていた〈ネスカフェ〉をオフィスにも広めた〈ネスカフェ アンバサダー〉(連載第3回「ネスレ日本の挑戦〈ネスカフェ アンバサダー〉」参照)を転用すると、意外なビジネスモデルが見つかるかもしれません。
 また、ピクト図解表記ルールでは「個人」のマーク(人間の形)と「企業」のマーク(長方形)は異なるデザインなので、B2Cビジネスなのか、B2Bビジネスなのか一目瞭然です。「ビジネス専用の文房具」は個人の財布を狙うのか、会社の経費を狙うのか。そのために必要な「チャネル(CH)」と「パートナー(KP)」は誰なのか。ピクト図のプレーヤーの入れ替えを「ビジュアルシンキング」してみるとよいでしょう。

 ピクト図で広げたアイデアは、ビジネスモデル・キャンバスにも反映させましょう。このように、キャンバス→ピクト図→キャンバス→ピクト図→……のプロセスを反復して、ビジネスモデルのプロトタイプを深掘りしていきます。
 

「1→2→4ルール」が深い議論を生み出す

 スティーブ・ジョブズのような天才は別ですが、ビジネスモデルのプロトタイピングはチームで実施すると効果的です。組織全体から集められた多様なメンバーがいると、さまざまな側面からビジネスモデルを検証し、組み立てることができます。経験則ですが、1チーム4~5名が最適です。チームでビジネスモデル・キャンバスを使う場合、話しあいをしながら大きなホワイトボードに付箋を貼って埋めていく方法が一般的ですが、私のやり方では、最初からグループで議論することはせず「1→2→4ルール」で議論します。

「1→2→4ルール」とは、私がリクルートで学んだブレインストーミング手法の1つで、「個人ワーク→ペアワーク→グループワーク」の3段階で議論するルールのことです。この手法でブレインストーミングすると、グループで深い議論ができます。

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【写真4】ワークショップでの討議

 まず、個人で作成した「ビジネスモデル・キャンバス」と「ピクト図」を2人1組になってレビューします(ペアワーク)。その後、自分のアイデアをチーム内でプレゼンテーション(グループワーク)。そして、大きなホワイトボードを使って全体での討議に入ります【写真4】。
 複数のプランを「レゴ」ブロックのように組み合わせてもいいし、誰か1人のプランをベースにブラッシュアップしてもかまいません。組み合わせを変えるだけで、さまざまなビジネスモデルの「プロトタイプ」が大量につくれます。

 こうしてつくられた「プロトタイプ」からビジネスモデルを構築し、それをいかにA社のビジネスモデルに「アナロジー発想」するか。それは次回、ご紹介することにしましょう。次回はいよいよ、最終回です。お楽しみに。(続く) 

 

板橋 悟(いたばし・さとる)
1963年生まれ。「ピクト図解」考案者。エクスアールコンサルティング株式会社代表取締役、エデュテインメント・ラボ代表。東京工業大学理学部物理学科 卒業後、リクルートに入社。米国マサチューセッツ工科大学(MIT)に社費留学。帰国後、KIDS向け教育(エデュテインメント)事業を新規事業として立 ち上げる。現在はビジネスプロデューサーとして、企業の新商品開発・新規事業開発支援をするかたわら、大学生に「世の中の仕組み・儲けのカラクリ」をピク ト図解メソッドで教えている。人気マンガ「『ONE PIECE』のビジネスモデル分析」は人気講座。慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)修士課程在学。著書に『ビジネスモデルを見える化する ピクト図解』(ダイヤモンド社、2010年)、『「記事トレ!」日経新聞で鍛えるビジュアル思考力』(日本経済新聞出版社、2009年)、『なぜ分数の割り算はひっくり返すのか?』(主婦の友社、2011年)など。

※「ピクト図解」はエクスアールコンサルティング株式会社の登録商標です。

 

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