デジタルコンテンツ収益化のカギは、
顧客による価格設定にあり

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デジタルコンテンツの収益化はなかなか悩ましい問題だ。広告収入とは別に、コンテンツそのものの対価をユーザーから得るにはどうすればよいのか。プライシングの専門家が、「公平性」に基づく投げ銭式の価格設定法を提案する。本誌2014年4月号(3月10日発売)の特集「ビジネスモデル 儲かる仕組み」の関連記事、第5回。


 ビジネスのデジタル化を成功させるのは難しい。変化に対して常に抵抗を示す業界であれば、なおさらだ。新聞業界はその好例である。ニューヨークタイムズ紙のコラムニストであるデイビッド・カーは、新聞業界の危機的な状況を次のようにまとめている。

「しっかりしたニュース記事を提供するのは金のかかる事業であり、そのビジネスモデルは窮地にある。『細分化された読者』と『広告の低迷』という名の機関車が猛スピードで近づいてくる線路に、体を縛りつけられている状態だ」(ニューヨークタイムズ 2013年10月20日

 しかし、暗闇の先には明るい兆しも見えている。たとえばアマゾン創業者のジェフ・ベゾスによる、ワシントンポスト紙の買収だ。さらにその後、イーベイ創業者のピエール・オミダイアが2.5億ドルを投じて新たに大衆向けのニュースサイトを立ち上げると発表した(2014年2月にザ・インターセプトが正式にオープン)。デジタル時代を代表する2人の大物による意外な投資に対して、デジタル化に否定的な人たちも否応なく強い関心を示すことになった。しかし、ベゾスは今後の重要課題も即座に指摘している。

「ワシントンポストは、取材重視の報道姿勢で知られています。重要なニュースを白日の下にさらすために、エネルギーと資本、汗と大金を注いでいるのです。しかしそれらのニュースは、他の無数のサイトによって4分程で要約され、無料で配信されてしまう。このような環境のなかで、一体どのようにビジネスを成立させればよいのでしょう?」(ワシントンポスト 2013年9月3日

 ベゾスのこの疑問には、おおいに共感できる。新聞、音楽、映画、ゲーム、ソフトウェアなどを販売する数多くの企業が苦慮している、根本的な問題を言い表しているからだ。そして筆者らも、長きにわたる研究を通じて、この問題を掘り下げてきた。実際、デジタルコンテンツへの移行は、価値の創出に対する姿勢を考え直すよう企業に迫るものだ。「価値」とは一体何なのか、という本質的なところまで立ち戻らなくてはならない場合すらある。にもかかわらず、企業がデジタルコンテンツを現金に変える方法は、時代にマッチしていないようだ。旧来のルールに沿ったそれらの手法は、物理的な商品ではうまくいったかもしれないが、今日のデジタル環境ではほとんど通用しない。

 先見の明がある一部の者は、この矛盾に気づいたうえで、「フリー」(および有料部分を掛け合わせた「フリーミアム」)を今後の賢いやり方として提唱した。しかし残念ながら、無償提供が将来莫大な収益を生み出すという考えは、簡単には解決できない別のさまざまな問題を引き起こしている。一方で、「ペイウォール」(無料ではアクセスさせない有料コンテンツ化)という強硬路線や、それをもう少しソフトにした課金アプローチを推奨する者もいる。目標は、単一もしくは少数の固定料金の設定だ。このアプローチは、従来型のコンテンツプロバイダーに支持されることが多い。しかし、デジタルというプラットフォームに潜む無限の多様性、そして(言うまでもないが)存在しないも同然の限界コストを考慮した場合、このモデルでは多くを取りこぼすように思われる。

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