仕組みづくりは徹底的に。一度根付くと楽になる。

良品計画会長 松井忠三氏インタビュー

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前編ではビジネスモデルをお客様の変化に合わせて変えていく重要性と、良品計画のビジネスモデルがどう変わってきたかを紹介した。後編の今回は、お客様の変化をとらえ、それを反映させるために、どのような取り組みをしているか、話を伺った。良品計画 松井忠三会長へのインタビュー後編。

無印良品を支える「血の通ったマニュアル」

――お客様の変化をとらえるために、具体的にどのような取り組みをしておられるのでしょうか。

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松井 忠三(まつい・ただみつ)
1949年、静岡県生まれ。株式会社良品計画会長。東京教育大学(現・筑波大学)卒業後、西友ストアー(現・西友)入社。92年良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、2001年社長就任。赤字状態からのV字回復を果たし、2008年より現職。著書に『無印良品は、仕組みが9割』(角川書店、2013年)

 お客様の変化をどうとらえ、そこで会社をどう変えてゆくか。それがマーケティングとイノベーションという2つの要素です。ただ、お客様の変化というのを難しくとらえる必要はありません。どういう商品が売れるか考えるよりも、現実に売れた商品がいい商品だと考えるしかありません。絶対ヒットさせようと考えてビジネスをしても、なかなか成果は出せません。お客様の変化を早めにとらえ、いくつか提案したなかから売れた商品がマーケットに合った商品となるのです。考えながらオペレーションしないとうまくいかない時代になっていると感じています。
 変化をとらえながら提案を繰り返す。これを組織の力としなければ成長することはできません。私が社長に就任した2001年の中間期は38億円という赤字に直面しましたが、そうなるに至った根本的な問題は企業風土にあると考えました。経験主義が重視され、ベテラン社員の力に頼っていたため、10人いれば10通りのやり方が存在していました。つまり、組織としての基準を持っていなかったのです。そこで私は仕組み化、見える化、標準化という3点をベースに組織改革に乗り出しました。そして、標準化にあたってマニュアルを作成しました。店舗業務で使う「MUJIGRAM」と本部で使う「業務基準書」という2つのマニュアルを作成することで、それを読めばだれもが一通りの仕事ができる基準をつくったのです。

――マニュアルというと変化や創意工夫とは対極にあるように思います。

 基本のない人は自己流にやろうとしても非効率なだけです。正しい形を極めた人が創造性を発揮するのであって、形がないところに進化はありません。だからこそ基本をつくるためのマニュアルを作成しましたが、マニュアルはつくられた瞬間から陳腐化が始まるという問題もありました。事実、無印良品でも過去につくられたマニュアルがありましたが、ほとんど使われないものとなっていました。使われないマニュアルに意味はありません。使ってもらうためには、常に更新し続け、血の通ったものにしなければなりません。
 「MUJIGRAM」はその点を意識してつくりました。細かいところまで「誰のために、何のために」という目的を明確に記載し、それを意識することで業務がただの作業とならないようにしています。我々の業務を見える化することで、問題点などが浮かび上がってきます。問題点が分かったら、今度はその改善提案をする。この改善提案は毎月行っていますが、この改善策はすぐにマニュアルに反映され、各店長に変更箇所が伝達されます。そうすると業務がまた改善され、レベルアップしていくのです。これが繰り返されることで、創造的な仕事へと変わっていくのです。

 

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