お客様の変化を読む力があれば、
ビジネスモデルは変えられる

良品計画会長 松井忠三氏インタビュー

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本誌2014年4月号(3月10日発売)の特集は「ビジネスモデル 儲かる仕組み」。近年、アパレル業を中心としたSPA(製造小売業)の利益率の高さが注目を浴びるようになっているが、無印良品を展開する良品計画は、生活雑貨が中心商品でありながらSPAというビジネスモデルを持つ。38億円の赤字から黒字経営へとV字回復を果たした同社の松井忠三会長に、ビジネスモデルのあり方について話を伺った。全2回。
 

時代の変化を先読みして、ビジネスモデルを補強せよ

――5期連続の売上増を達成されましたが、良品計画の強みは何でしょうか。

 お客様の視点に立って商品を開発し、売り場をつくり、お客様からの反応を改善につなげている仕組みを持っていることです。そういう組織風土が強みといってもよいと思います。企業の競争力は3つの要素、すなわちブランド、ビジネスモデル、実行力から生まれます。

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松井 忠三(まつい・ただみつ)
1949年、静岡県生まれ。株式会社良品計画会長。東京教育大学(現・筑波大学)卒業後、西友ストアー(現・西友)入社。92年良品計画へ。総務人事部長、無印良品事業部長を経て、2001年社長就任。赤字状態からのV字回復を果たし、2008年より現職。著書に『無印良品は、仕組みが9割』(角川書店、2013年)

 ブランド力は商品そのものから生まれます。無印良品は「わけあって、安い」というキャッチフレーズとともに、リーズナブルで品質のよいものを提供することに努めています。宣伝にも有名人を起用することはありません。いまは世界の日用品からよいものを学び、商品化する「Found MUJI」や、無印良品のコンセプトに共感していただいた世界的なデザイナーなどによる「World MUJI」を充実させ、さらにブランド力を高める試みをしています。

 また、我々のビジネスモデルはSPAです。SPA企業はほかにもありますが、我々の特徴は衣・生・食のすべてを扱っている点にあり、売上の大半は生活雑貨なのです。ライフスタイルを売っているのが無印良品であり、お客様は我々の提案するライフスタイルに共感してくださる方々です。SPAである以上、商品が売れなければ在庫を抱えるリスクもありますが、その分のメーカー利益も得られますし、企画・製造も自分たちで行うために、お客様のニーズに比較的合わせやすいという強みを持っています。お客様の視点に立って商品開発を行うためには、こうしたビジネスモデルは欠かせません。

 そしていかに優れた商品やビジネスモデルを持っていても、オペレーション力がなければモノは売れません。そこで重要になるのが3つ目の実行力です。お客様のニーズにどう合わせるか、マーケットにどうビジネスを合わせるかが問われます。たとえば中国市場で成功したからといって、欧米の市場で成功するとは限りません。ローカル・マーケットの特徴に合わせてビジネスを変えていく必要があります。その適応能力、またそれを可能にする組織風土も実行力のひとつと言えるでしょう。
 これら3つの要素を同時に備え、かつそれをレベルアップさせていく企業にしない限り、世界のどこにあっても勝ち抜いていくことは難しいと思います。

――ビジネスモデルについて特にお伺いしたいのですが、時代の変化とともにビジネスモデルも変化させていくのでしょうか。


 変化を敏感に感じ取り、早い段階でビジネスモデルのほころびかけた部分を素早く修正する必要があります。それを怠れば企業の競争力は失われ、ビジネスモデルは崩れてしまうでしょう。

 たとえばGMS(スーパーマーケット)は17年連続で既存店は減少しています。GMSのビジネスモデルは、「セントラル・バイイング」「チェーン・オペレーション」「セルフ・サービス」「ワンストップ・ショッピング」の4要素から成り立っています。「セントラル・バイイング」によって調達コストが抑えられ、「チェーン・オペレーション」によって管理コストも抑えられました。「セルフ・サービス」でも人的コストが抑制でき、「ワンストップ・ショッピング」により顧客の利便性は増しました。
 しかし時代は変化しています。「セントラル・バイイング」の長所はSPAの長所に劣り、「ワンストップ・ショッピング」はコンビニにとって代わりました。「セルフ・サービス」はいまや百貨店でも取り組んでおり、GMSの特徴ではなくなってしまいました。いまでは「チェーン・オペレーション」のみが少し有効という状況になり、ちょっとした買い物であれば、スーパーマーケットである必要がなくなってしまったのです。

 一度崩れてしまったビジネスモデルを立て直すのは至難の業です。世の中の動きが元に戻ることはまずないのですから、さらにその先を行くビジネスモデルを構築しなければなりません。全面的にビジネスモデルをつくり変えるのは非常に難しいため、変化を先読みするのを止めた時が企業の寿命となるでしょう。
 

 

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