カーシェアリング事業は性善説で成り立っている

パーク24株式会社 西川光一氏インタビュー(後編)

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前編では、カーシェアリング事業参入の経緯と同社の強み、そして日本市場の特性について語っていただいた。シェアリング・ビジネスは利用者のモラルという、企業がコントロールできない要素に依存したビジネスモデルになっているが、このようなビジネスモデルで事業を推進するための心得とは何か、パーク24・西川社長に伺った。

利用者のモラルに依存するビジネスモデル

――利用者のモラルに依存するビジネスモデルとなっていますが、そうしたビジネスを推進することへの不安はなかったのでしょうか。

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西川 光一(にしかわ・こういち)
1964年生まれ。パーク24株式会社代表取締役社長。金属加工機械メーカーのアマダに勤めた後、1993年にパーク24に入社。創業者である父・西川清の跡を継ぎ、2004年1月より現職。2011年12月からはタイムズ24株式会社代表取締役社長も兼任。

 まったくありません。やはり性善説でありたいですよね。
 タイムズの無人駐車場は性善説の下に成り立っています。性悪説に立てば、車止めの先端にギザギザをつければいいんです。海外だと出口にそういうものがあります。出口から入ろうとする車のタイヤをパンクさせられる仕掛けですね。しかしそれをやってしまうと、利用者全員を性悪説で見ているということが利用者にも伝わってしまいます。それを感じた時、人はどう思うでしょうか。だから当社はそうした乗り越え防止機能はつけませんでした。残念ながら1%程度はそういう人もいらっしゃいますが、ほとんどの人がちゃんと使ってくださっています。

――モラル向上のための啓蒙活動はどのようにしているのでしょうか。

 性善説ではあっても、人というのは魔が差すものです。魔が差さないようにするためには啓蒙も必要です。
 駐車料金の未払いが多かった時期に、仕方なく監視カメラをつけました。未払いで出庫した時のみ写真を撮るようにして、駐車場の看板にも損害金請求の注意書きを記載しました。そして実際に未払いを確認し、内容証明と写真をつけて自宅に郵送すると、98%の方が何も言わずにお支払いされます。たとえ駐車料金が1000円だったとしても、何倍もの損害金を払うのです。これはつまり、罪の意識があるということです。こうした出来心を防ぐのも大事なことです。特にカーシェアリング事業では、ルールを正しく守って利用している方を守る意味でも必要なことです。

――ほかのサービスではいちいち言わなくても、というような注意書きを見てうんざりすることが多いのですが、性善説に立つビジネスはその対極にあるように感じます。私もカーシェアリングを利用しているのですが、先日は「大雪のため、ご利用をお控えください」というメッセージが配信されました。これはとてもいい伝え方だと思いました。

 サービスをしている以上、こちらから「乗るな」とは言いたくありません。システム上、エンジンをかからなくすることもできますが、本当に使いたい人のことを優先して考えれば、その選択肢はあり得ません。いつも使えるものが使えなくて大事になってしまった、ということの方が恐ろしいと思います。
 駐車場もカーシェアリングも、禁止行為を増やすことは簡単ですが、そこからノウハウは生まれません。どうすればできるかを考えることで、ノウハウが得られるのです。だから現場は本当に大変だと思いますが、それでも禁止することはできるだけ避けたいと考えています。そういう姿勢でやった方が利用者の方にも喜んでいただけますし、オペレーションへの負荷を乗り越えればそれが強みにもなるのです。

 当社は自前主義だと言いましたが、アウトソーシングした方が楽なのは確かです。ですが、その生みの苦労をしたからこそノウハウがあり、当社の強みになっています。苦労は必ず返ってくるものです。いま、この業界で自前の仕組みを持っているのは当社だけですので、これが圧倒的な競争力に繋がっているのです。

 

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