CSVは社会インフラを担う企業の義務である

ヤマトホールディングス 木川眞社長インタビュー

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前編ではヤマトホールディングスが、ステークホルダーの満足をどのように高めているか、その取り組みを紹介した。近年ではさらに地域社会を視野に入れ、みずからが果たすべき義務としてCSV(共通価値の創出)の実現を目指している。その具体的な取り組みについて話を伺った。

CSVは特別なサービスではない

――現在推進しておられるCSVも地域社会の満足を生み出すために取り組まれたのでしょうか。

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CSVについて語る。後ろの写真は東日本大震災の被災地を走る宅急便トラック

 CSVについてはまた別の切り口から考えています。お客様第一という理念の実践を通し、おかげさまで宅急便は、いまや社会インフラの一つとして機能しています。そうである以上、我々の日々の業務も一民間企業のサービスという視点だけで考える訳にはいかなくなりました。最近は、残念ながら財政の悪化に伴い地方自治体はサービスを切り捨てざるを得なくなっています。そうした地域社会への貢献は、社会的企業の責任として当然取り組むべき課題だと思います。
 しかし、企業として余裕があるから行うCSR(企業の社会的責任)というのは、本当の意味での社会的責任と言えるでしょうか。CSRを持続するためには、本業をコアにした展開を考えなければならないのです。

――CSVを積極推進するようになったきっかけは何でしょうか。

 そもそものきっかけとなったのは、2010年に策定した創業100周年に向けての長期経営計画でした。「社会から一番愛され、信頼される会社」となるために、一方でグローバル展開を進め、その対極にあるような地域密着型のサービスを提供することにも重点を置いたのです。そこから膨大な利益を得られるとは思いませんが、我々は地域活性化という課題に対する社会的責任を担うことができる数少ない企業であると自覚しています。CSVに取り組むことは社会インフラを支える企業の義務でもあります。

――具体的にはどのように取り組んでいるのでしょうか。

 岩手県で行っている「まごころ宅急便」は、買い物支援と高齢者の見守りサービスを組み合わせたサービスです。これはまさにヤマト運輸のネットワークを活かしたサービスで、いまでは同様のCSV視点の取り組みが、全国で約500案件ほど進んでいます。その中で、90の自治体とは協定を結んで取り組んでいます。当社は全国におよそ4000の拠点を持っており、過疎地であってもセールスドライバーがその地域の集配を行っています。だからこそ、我々の経営資源、すなわち店舗やセールスドライバー、車、通信回線などをうまく活用すれば、追加コストを最小限に抑えながら地方自治体の住民サービスを代行できると考えたのです。セールスドライバーは担当している地域に溶け込んでおり、各ご家庭のことをよく知っており、顔なじみになっていますので、注文の品を各ご家庭に配送したときに、「困ったことはありませんか」「体調はいかがですか」と伺うようにしました。サービスを始める前から「○○さん」と名前で呼んでいただける関係を築けていたことは、CSVの大きな推進力となりました。

 

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