「鍛える文化」と「褒める文化」で満足を生み出す

ヤマトホールディングス 木川眞社長インタビュー

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ヤマトホールディングスは、宅配便業界のシェアトップ、同業界におけるJCSI(日本版顧客満足度指数)では5年連続で全指標1位となったヤマト運輸を傘下に持ち、好感度の高い企業として名を馳せる。さらに社員や株主といったステークホルダーの満足度の総和をダントツにする、という事業のコンセプトを掲げ、近年では地域社会と企業の共通価値の創造を、本業を通じて実現するというCSVの考え方に基づく事業の展開にも力を入れている同社社長の木川眞氏に話を伺った。全2回。
 

「サービスが先、利益は後」

――長年、業界シェアトップの座を維持し、顧客満足を得続けているのはなぜでしょうか。

 このような評価を頂いたことは、大変ありがたいことです。しかしながら当然、一朝一夕にできるものではありません。これは小倉昌男が宅急便事業を始めて以来、企業理念を徹底的に社員に刷り込んできた、その表れだと思います。その理念とは簡単に言えば「ダントツのサービスを通して、お客様の満足度を上げる」というものです。荷物を送るお客様はもちろんですが、荷物を受け取るお客様の満足度も高めるサービスを徹底的に追い求めることが、高い評価に繋がったと思います。そのような評価を頂くためには、商品・サービスそのものの質に加え、社員、特に直接お客様と接する機会が最も多いセールスドライバーが理念をみずから体現することが重要です。

――理念の共有は多くの企業が謳っていますが、その徹底は至難の業です。具体的にはどのような取り組みをしているのでしょうか。

 昭和6年に制定された社訓を毎朝唱和しています。社訓の一番目は「ヤマトは我なり」というものです。セールスドライバーは会社を出たら独り、だからそれぞれが会社の代表としてお客様に接する、という心構えを説いたものです。東南アジアを中心とした世界23ヵ国に存在する海外事業所でも、現地の言葉で社訓を唱和しています。しかし、ただ繰り返すだけでは行動に結びつきません。その時々で経営者みずからが、その社訓の意味するところを具体的に説明し行動することが重要です。
 スキー宅急便を始めたばかりの頃、大雪によって道路が通れなくなり、お客様にスキー道具を届けられなくなったことがありました。約款上は天災時の免責について記載していましたが、お客様には簡単にはご理解いただけません。そこで当時の小倉社長は「スキー板や道具を買いたい、あるいは借りたい人がいれば、その希望通りにしなさい」という指示を出しました。普通ではあり得ない対応だと思います。でもそうしたことで、荷物の不着という事態があっても評価を損ねず、その後のスキー宅急便やゴルフ宅急便の急成長につながりました。お客様の目線でサービスを考えれば、必然的にそのサービスは支持される、目先の利益に惑わされてはいけないという考えがあったのです。これが「サービスが先、利益は後」という理念を実践した代表例です。
 こうした事例はそう頻繁にあるものではありません。しかし経営者が一度も実例を見せずに理念ばかり繰り返していては、空虚なものになってしまいます。理念を行動で示す事例がいくつかあり、語り継がれるからこそ、理念が説得力をもって社員に浸透していくのです。

――「利益は後」となると、株主満足はどのように高められますか。

 株主満足は、最終的にはきちんと配当を行えば高められます。顧客満足の創造が企業利益に繋がっており、いまのところ還元もできています。しかし、当社がもっとも重視すべきはお客様ですから、理念の通り、利益優先とならないよう努めています。

 

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