ビッグデータ時代のマネジャーに求められる、「データを伝える力」

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企業が直面するのはデータ・サイエンティストの不足だけではない。分析結果を効果的に伝える能力を持つマネジャーもまた、足りていないという。優れた成果をしっかり伝えることの重要性を、ダベンポートが2つの逸話から示す。


 定量的な思考をもって、データと分析に基づく意思決定を行えるビジネス人材の需要が高まっている。そうした人材は今後ますます貴重になる。ビッグデータに関するマッキンゼー・グローバル・インスティテュートの報告書によれば、私たちが生み出すデータのすべてを有効に使うためには、データに精通しているマネジャーがあと150万人以上必要であるという。

 ただし、ハーバード大学の元統計学部長で現在は同大学院(学術系)の学長であるモン教授(孟晓犂)の言葉を借りれば、「ワインの目利きになるためにワイン生産者になる必要はない」。つまり、マネジャーは分析の専門家になる必要はないということだ。しかしマッキンゼーの報告書で強調された憂慮すべき不足を満たすためには、マネジャーたちはより賢いデータ利用者となることが実際に必要である。定量分析についてのより深い理解と、(同じくらい重要なこととして)数値が何を意味するのかを伝える能力を備えなくてはならないのだ。

 あまりに多くのマネジャーが、社内のアナリストたちの力を借りながら、膨大な情報のデータベースをただ蓄積しているだけだ。それらが日の目を見ることはない。あるいは、自動生成されるビジネス報告書の形でしか発信されない。数値を計算するのはマネジャーの仕事ではないが、数値について伝えるのはマネジャーの仕事である(この点については、キム・ジンホと私の共著Keeping Up with the Quants〈マネジャーのためのアナリティクス入門〉で詳述している)。数値やデータの意味は放っておいてもおのずと伝わる、などという期待は避けるべきだ。

 グレゴール・メンデルから得られる教訓を考えてみよう。彼は遺伝の概念を発見したが、生存中にそれが承認されることはなかった。論文をチェコ・モラビア地方の目立たない科学雑誌でしか発表せず、ごく少数の著名科学者に別刷りを送っただけだからだ。そのうちの1人であったダーウィンは、この遺伝学者の論文に気づくことさえなかったといわれている。メンデルはその草分け的な実験を1856~63年にかけて行ったが、8年間におよぶ入念な研究の重要性は、死後に長く時を経て20世紀が来るまで認められることはなかった。ここから得られる教訓は、「研究プロジェクトに何年も費やすつもりなら、その成果を広めるためにも時間と労力を注ぐ必要がある」ということだ。

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