意思決定とは「管理すべきタスク」である

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意思決定は業務遂行の一手段ではなく、業務そのものである――。この前提が盲点になっていないだろうか。組織による卓越した決断の事例を報告した『ジャッジメントコール』の著者ダベンポートが、意思決定を業務として管理するための5つの原則を示す。本誌2014年3月号(2月10日発売)特集「意思決定を極める」の関連記事、第4回。


 重大な意思決定を迫られたマネジャーが、リソースにも知識にも恵まれていながら、賢明とはいえない決断を下すことが多いのはなぜだろうか。理由の大部分は、意思決定に対する認識が間違っていることにある。彼らは主要な意思決定を、組織の仕事を前進させるためにすべき選択のように考えている。しかし本来、意思決定そのものが仕事なのだ。このちょっとした意識の転換、つまり重要な意思決定を「管理すべきタスク」と見なすことの意味は大きい。それは、優れたマネジャーとして他の業務に求められるのと同じレベルの規律と目的意識をもって対処されるべきものだ。そして適切な人、ツール、プロセスを揃えることがよい意思決定につながることを理解している必要がある。

 私はブルック・マンビルとの共著『ジャッジメントコール 決断をめぐる12の物語』(邦訳は日経BP社、2013年)で、大きな意思決定に伴う課題について、12の実際の事例を通して考察した。とんでもない大失敗をあげつらうのではなく、正しい決断を下した組織に注目し、どのようにしてその決断に辿りついたのかを調査した。そして12の事例から12の教訓を浮き彫りにすることができた。だが、よりメタ的な(意思決定そのものについての)教訓を強調しきれたかどうか確信がもてない。つまり、意思決定の質を向上させたいと望む人が真っ先にすべきなのは、意思決定そのものを1つの業務として見ることなのだ。

 調査した12の卓越した決断を振り返ると、それらが非常に難しいものであったことは明らかだ。たとえば、発射の日が近づくたびに重大な決断を迫られるNASA。その意思決定プロセスは、2度の大惨事(チャレンジャー号の爆発事故とコロンビア号の空中分解事故)を経て、賭けの大きさを誰もが再認識してから変わった。ムードが盛り上がり、打ち上げに対する人々の期待が高まっている時に、利害関係者(そのミッションの飛行士たちを含む)を一堂に集め、ミッションが安全で進めてもよいものかどうかを討論する場を設けることは難しい。だが、それが標準的な手順の一部になれば、よりよい意思決定ができるようになる。

 意思決定そのものを業務として見れば、優れた業務に関する一般原則の多くが当てはまることがわかる。あなたの頭を切り替えるために、意思決定のマネジメントに関わる5つの基礎的なアドバイスを提供しよう。

●意思決定業務を1人でやらない
『ジャッジメントコール』の主旨は、意思決定の方法を「偉人」から学ぶ、という発想からの脱却を組織に促すことだ。行動経済学や意思決定バイアス(偏り)などの分野の研究成果によれば、意思決定者は、どんな上級職にあっても1人残らず、合理的ではない欠陥のある意思決定プロセスに捕らわれている。1人の人間の脳は、補助がなければあまり優秀な意思決定エンジンとはいえない――同じ決断を何度も行い、その失敗から学んだ場合を除いて。つまり、重要な決断をCEOやその他の個人が単独で行ってよいケースは非常に稀なのだ。『ジャッジメントコール』で紹介しているのは、よい結果をもたらした賢明な決断がほとんどだが、わずかながら間違った決断も取り上げている。タイムワーナーのCEOジェラルド・レビンなどの事例だ(アップルのスティーブ・ジョブズでさえ何度か失敗している)。意思決定に際しては多様な人々に相談し、体系的プロセスを用いてそれらの意見をサンプリング(抽出)するべきだ。ここでは、ソーシャルメディアも活躍する。実際に、ITサービス企業のEMCは先の不況下でコスト削減に関する重要な決断をする際、ソーシャルメディアを使って社員を議論に加わらせている。

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