「強み」の水準が高いほど、人は度を超しやすい

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人は自分の弱みを克服するよりも、強みを磨くことに焦点を当てるべきである――この考えはいまや一般的であり、直感的に理解できるものだ。しかし「度を超えた強みの発揮は、マイナスとなる」と唱えるのが、リーダーシップ開発を専門とする2人のコンサルタントだ。強みへの過度の依存を戒める記事を、3回にわたってお届けする。


 過去10年間にマネジメントの世界で最も流行したムーブメントは、おそらく「強み」に関するものだろう。弱点を克服しようと努力するよりも、生来の資質を伸ばし強みを最大化すべきだ、という考えである。これはポジティブ心理学の祖、ドナルド・クリフトンのアイデアだが、彼の著書『さあ、才能(じぶん)に目覚めよう―あなたの5つの強みを見出し、活かす』(2001年。邦訳は日本経済新聞出版社)の共著者マーカス・バッキンガムによって、一般の人々に広く普及した。

 成功したムーブメントが常にそうであるように、強みのムーブメントも1つの論点のみを追求し、必然的に多くの関連要素を無視してしまっている。見落とされている重要な側面は多くあるが、ここでは特に危険な点に注意を促したい。つまり、強みを追求しすぎると弱みになる、ということだ。

 我々の新著Fear Your Strength(あなたの強みは、弱みにもなる)では、2人の共著者が合わせて50年にわたり何千人ものリーダーを分析し、何百人もの企業幹部にコーチングを行ってきた経験に基づき、教訓を提示している。我々はほとんどすべての強みに関して、度を越してしまう例を見てきた。自信が傲慢に、あるいは謙虚さが自己の矮小化に至ってしまうという具合だ。ビジョンがやがて目的を失った夢物語になる、あるいは焦点を絞り過ぎて視野狭窄になるといった例もある。どんな強みを挙げられても、それが行きすぎてパフォーマンスを損ない、キャリアさえも狂わせた事例をいくらでも紹介できる。

 この問題を研究するために我々が用いてきたのは、「リーダーシップ多能性指数(Leadership Versatility Index)」という斬新な評価ツールである。上司、同僚、部下からの評価を集める360度評価の手法を取り入れたものだが、スコアが高ければよいという加算式を前提とした典型的な5段階評価ではなく、「足りない」「適度」「行きすぎ」という独自の尺度を設ける。したがって評価者は、そのマネジャーの行動が4つの側面――強制力(forceful)、支援力(enabling)、戦略力(strategic)、オペレーション能力(operational)――において度を超しているかどうかを示すことができる。ほどんどのマネジャーが、このうち少なくとも1つで「行きすぎ」と評価されている(詳細はこちらの英文PDF)。

 さらに、生来の資質が顕著であればあるほど、つまり強みが優れていればいるほど、逆効果を招く危険は大きくなる。我々は、リーダーシップ多能性指数を用いた同僚の評価と、「クリフトン・ストレングス・ファインダー」――リーダーが質問票に記入して自身の生来の強みを明らかにするツール――の結果とを比較してみた。すると、特定分野での優れた才能と、「行きすぎ」と判定された側面の間には明らかな相関関係があったのだ。

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