ジェフ・ベゾスの頭脳を核とした
アマゾンの意思決定システム

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アマゾン創業者の実像に迫る評伝、『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(日経BP社)が話題だ。他者に真似できない決断を次々と繰り出すベゾス。その意思決定者としての背景と手法を、評伝著者のブラッド・ストーンに聞く。本誌2014年3月号(2月10日発売)の特集『意思決定の技術』、関連記事第2回。


 アマゾン・ドットコムは、この19年間で買い物のあり方をがらりと変えてしまった。その間長きにわたり、ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌のシニア・ライターでありジャーナリストのブラッド・ストーンは同社に注目してきた。このたび、ストーンの新刊『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』(邦訳は日経BP社)刊行にあたり、意思決定者としてのベゾスの進化について聞いた。以下はそのインタビューの抜粋である。

――取材を通して、ベゾスの意思決定のスタイルについて気づいた点はありましたか。

ブラッド・ストーン(以下略):2つほど思い当たります。これはベゾスの右腕、リック・ダルゼルの指摘ですが、ジェフには誰よりも優れていることが2つあるそうです。1つは、「その時点での」一番の真実を見つけようとすること。当たり前のことに聞こえるでしょう。しかしリックが言うには、真実をわかっている人は多いけれど、その真実が変わるかもしれないと考える人は少ないのです。2つ目に、ジェフは従来の常識に沿った型どおりのやり方というものを受け入れません。あらゆることを――どれほどの些事でも――抜本的に考え直そうとする、とリックは語りました。

 たとえば2013年秋、アマゾンはタブレット〈キンドル・ファイアー〉の新機種を発表しましたね。テクノロジー企業はこういう時、大々的に記者会見を行うのが普通です。でもジェフは、記者たちを20人程度の小グループに分けて順に招き、最初から最後まで自分で製品デモをしました。参加した全員がこの精力的なCEOとの会見を特別なものに感じ、その結果、このニュースは大きく取り上げられたのです。これは彼が物事のやり方を変えようとする、ほんの一例にすぎません。

――著書には、ベゾスが部下を激しく叱ったり見下したりし、相手のほうが多くの情報を持っていてもその判断を却下することがよくある、と書かれています。なぜそのような行動をとるのでしょうか。

 周囲の人間に対する要求が高い、というのが一因でしょう。常に誰よりも賢い彼は、周りが自分に追いつくことを期待しているのです。社員には大胆な発想(think big)をしてほしいと思っており、それが社内の合言葉のようになっています。世界を征服しようというくらいの意気込みが感じられないと、不満なのです。ただ公正を期して言うなら、本に出てくる彼のそうした態度・行動は昔の話であることが多く、年を経るにつれよくなっていると思います。いまは改まったのでしょう。

――英才教育プログラムを推進する学校に通っていた12歳のベゾスを知る教育研究者に、インタビューしていますね。学校で一番頭のよい子として育ったことが、みずからの意思決定の能力を過信することにつながっていると思いますか。

 彼の自信がときに裏目に出ることはあり、アマゾンは何度か失敗をしています。1990年代、インターネットが何もかもを変えると確信していた彼は、躊躇なく突っ走りました。何十億ドルも借金して事業を拡大したことで、後になってそのツケが回ってきます。疾走できる距離は彼が思っていたほど長くなく、5年にわたって投資家からの冷遇を被ったのです。このように、楽観的になりすぎるところはあるでしょう。ワシントンポスト紙の買収も同じです。既存の新聞社が次々に撤退しているにもかかわらず、インターネットで同紙を新しいビジネスにできると楽観視しているのです。何のためらいもなく猛進する傾向が、彼には見られます。

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