生活に密着してこそ見える、
新興国のリアルな消費者像

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BCGのコンサルタントは、インド・中国をはじめとする新興国の消費者の調査を行う際は、一般家庭に入り込み、冷蔵庫を一緒に開けるほど密着して話を聞くという。そこから得た知見とは。『世界を動かす消費者たち』監訳者の一人、津坂美樹氏に聞いた。


編集部(以下青字):日本企業の新興国への参入は、待ったなしの状況となっています。主に先進国の消費者に対応することを重視してきた日本企業が、新たに新興国の消費者に向き合うとき、考え方をどのように修正する必要があるでしょうか。

津坂:まず、先進国と新興国という「くくり」自体が現実にそぐわなくなっています。たとえば、女性という切り口で消費者を見た場合、先進国でも新興国でも女性には時間がないですし、女性自身の面倒は誰もみてくれません。また、程度の差こそあれ、先進国にも新興国にも富裕層と貧困層のギャップがあるのも周知の事実です。つまり、先進国と新興国の消費者インサイトはそもそも違う、といった先入観にとらわれないほうがいいでしょう。

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津坂 美樹(つさか・みき)
BCG東京オフィス シニア・パートナー&マネージング・ディレクター。
ハーバード大学政治学部および東アジア研究学部卒業(Magna Cum Laude)。同大学経営学修士(MBA)。BCG東京オフィス入社後、BCGニューヨークオフィス勤務を経て現在に至る。 BCGグローバル・エグゼクティブ・コミッティ(経営会議)メンバー、マーケティングのグローバル・リーダー。消費財、小売、ハイテク、金融業界を中心にマーケティング、消費者インサイト、営業改革、 コスト削減、 PMI(統合マネジメント)、イノベーション、事業開発, 事業戦略、組織 などのプロジェクトを手がける。監訳書に『ウーマン・エコノミー――世界の消費は女性が支配する』(ダイヤモンド社)。

 むしろ同じ国でも都市によって明確な違いが出ています。ただし、先進国では消費者インサイトに関する公式なデータが各種機関から発表されていますが、新興国には信頼できるデータがなく、ましてや新興国の田舎町については何もない状況です。そこでBCGでは、中国・インド・インドネシア・ブラジル・アフリカなどで独自にデータを拾っています。

 アメリカでは、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都会でも、アイオワやモンタナの田舎町でも、スターバックスでコーヒーを飲み、同じブランドの服を着て、同じブランドの車に乗っています。どの地域で統計を取っても、ブランドに対する接し方に大きな違いはありません。一方、中国では北京や上海という大都会と、田舎町では大きな違いが生じています。ひとくちに中国市場が伸びているといっても、たとえばラグジュアリー・ブランドは、今までのところは田舎町ではなく、大都会の富裕層が消費の中心となっていることは皆さんご存知だと思います。ですが、これは中小都市や農村部の所得上昇、中間層拡大や規制の変化により変わっていくでしょう。また、商品カテゴリーによって変化のパターンやスピードは異なります。

 さらに、細かく見ていくと、いろいろな事実がわかってきます。BCGの中国パートナーの調査では、中国の公務員の数は大都会で20パーセント、田舎町では40パーセントに上ります。しかし、堅実な公務員とは対極の起業家は、大都会よりも田舎町のほうが多いのです。こうしたことは、外国人が発音できないような町で暮らす、大都会とは異なる顔の消費者を見なければわかりません。

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