日本のベンチャーが世界のロールモデルになる日

WiL CEO 伊佐山元氏 インタビュー(後編)

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ベンチャーを盛り上げれば、社会も変わる

――著書のなかで、ベンチャーに年齢は関係ないとも指摘されていました。投資判断には影響しないのでしょうか。

伊佐山:実際の投資案件は中年経営者によるベンチャーが多いし、成功も多い。やはりいろいろな経験をしてきた人というのは強いですよね。そういう意味では、むしろシニアの起業はもっとあってよいと思いますし、投資判断でも有利に働きます。日本は世界でも稀なレベルでお年寄りが健康で、元気な国です。頭の切れる人なんて65歳以上にはいくらでもいますし、そんな人たちが年金をもらって家に閉じこもっているのはもったいない。ベンチャーというと若者の特権のように思われがちですが、75歳のベンチャーなんて面白いと思いませんか(笑)。そういう環境があっていいと思います。世界にはまねできない、あるいはこれからの世界のロールモデルになるかもしれません。

 一方でシニアだけというのも限界があるので、若い人と結びつく仕掛けが必要です。WiLはそういった場でもありたいと考えています。若い人たちもシニアから、大企業との付き合い方とか大局的な物の見方とか、教わるべきことはいっぱいあると思います。Grey haired CEOとも言いますが、若い人たちのなかに責任ある立場として、ひとりでもシニアの方がいると、若さによる暴走への抑止効果が働くのです。そういう企業は崩壊せずにうまくいくことが多いんです。老害にならないよう、注意する必要はありますが(笑)。

 日本はなかなか物事が変わらない、という声もありますが、ある事例があってその成功が見えた瞬間に、みんな一斉に真似をすることも得意じゃないですか。だからWiLはそういう分かりやすい事例を早く、たくさんつくることを目指しています。

――ベンチャー育成のための教育の場を設けることで、社会は変わるでしょうか。

伊佐山:そう思います。いくつかそのための要素があると思います。まずはベンチャーに対するイメージを変えないといけません。特に日本では、ベンチャーの創業は財産をなげうってやる博打のようにも見られがちです。ただ、ベンチャー創業時の社長の給料は、普通の新卒と同じくらいでも株を持っています。これが4~5年もしたら大化けしてお金持ちになるかどうかが分かります。
 問題はその後の身の振り方です。急にテレビに出るようになって、豪勢な暮らしぶりを自慢するようではだめです。アメリカではほとんどの成功者は散財せずに寄付をし、生活は変えないで、もっと社会に還元しようという発想の人がほとんどです。起業家でもなんでも、ちゃんとやってた人が金持ちになるのはいいじゃないか、という空気をつくらなければ、ただでさえ胡散臭い目で見られるベンチャーの世界に飛び込んでくる人は増えてこないでしょう。逆に、リスクを取った人が成功すればちゃんと金銭的に報われ、もっと大きなことにトライできるイメージさえできれば、あとは放っておいてもベンチャー業界に優秀な人が飛び込んでくると思います。ただ、いまの時点では成功したベンチャーの数があまりにも少ないので、まずはそこを増やさなければいけません。

 ベンチャーはニッチ産業のひとつと捉えています。しかしこれが10年、20年と続くことによって、ベンチャーがひとつの大きな産業となるでしょう。現時点では、たとえば東大を卒業した人の9割は大企業に行ってしまいますが、これがフィフティ・フィフティになったら、とてつもない世界になるのではないでしょうか。そういう実例をつくれたら、最終的には学校教育の在り方も変わると思っています。社会の環境を変えるのは最も時間がかかる取り組みですが、そこまで踏み込めるような環境づくりをしたいんです。

 WiLというビジネスを通じてベンチャーを盛り上げ、ベンチャーが盛り上がることで教育の在り方を変え、教育を変えることで社会の環境も変わる。そう信じています。

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