世界のイノベーションを支える、
新興国のエンジニアたち

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世界規模のイノベーションは、多くが先進国の多国籍企業によって推進されている。しかしそれを支えるのは、新興国にいる多くの卓越したエンジニアたちであることを見逃すべきではない。「リバース・イノベーション」の提唱者ゴビンダラジャンらが、人材・アイデア供給源としての新興国の重要性を示す。本誌2014年2月号(1月10日発売)の特集、「日本企業は新興国市場で勝てるか」の関連記事、最終回。


 トムソン・ロイターは先日、「トップ100グローバル・イノベーター」(世界で最も革新的な企業トップ100)の2012年版を発表した。これは、特許の規模とその影響力において、世界で最も優れた企業と研究機関を選び称えるものだ。このリストをざっと眺めれば、100社すべてが先進国の企業であることがわかる。内訳は、アメリカが47社、日本が25社、西ヨーロッパが21社、韓国が7社である。(訳注:この数字は2012年版のものであり、本記事執筆後に2013年版も発表されている。そこでは上記以外の地域からカナダ1社、台湾1社がランクインしているが、米日欧の占める割合は前年からさほど変わっていない。)

 ランキングを見た読者のなかには、こう勘ぐる人もいるかもしれない。イノベーションとは先進国の大企業に勤めるエンジニアと科学者の領分であり、インドや中国などのイノベーターは、結局は重要ではないのだろうと。筆者らは、トムソン・ロイターの評価方法は非常に精密で論理的なものだと思うが、上述のような思い込みは誤っていると警告したい。以下にその主な理由を3つ示そう。

キャプティブR&Dセンター

 第一に、イノベーター企業の多くが、インドや中国などの新興国でエンジニアを採用している。たとえば、GEヘルスケアが開発・製造した保育器の〈ララバイ・ベビー・ウォーマー〉はヨーロッパでよく売れているが、この機器を設計したのはインドのエンジニアだ。また、グーグルの〈マップメーカー〉はユーザーが地図の情報を編集・改善できるオンラインの人気アプリケーショだが、これを考案し設計したのは、同社のインドの研究所で働いているラリテシュ・カトラガッダとマニック・グプタだ(ちなみに、アメリカ政府がウサマ・ビン・ラディンの最後の隠れ家の写真を公開する前に、世界中のユーザーがマップメーカーを使って場所を特定した)。

 筆者らの推計では、トップレベルのイノベーター企業に属する数万人に及ぶエンジニアが、実際には海外――BRIC諸国――にある技術センターで仕事をしていると考えられる。「キャプティブR&Dセンター」、あるいは海外R&D拠点などと呼ばれる施設だ。しかもこの推計には、海外で生まれて海外で教育を受けた後、シリコンバレーなどの「ホットスポット」にあるR&Dセンターで働いている技術者の一群は含まれていない。今後10年ほどは、こうした新興国出身のエンジニアたちが、世界のイノベーションにおいてますます重要な役割を果たしていくだろう。欧米の雇用主の下でそのまま働き続ける人もいるだろうし、起業する人もいるだろう。あるいは、インドや中国の企業がイノベーションのバリューチェーンで優位なポジションにつけるよう、力を貸す者もいるはずだ。

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