ヤフーは買収タイプに応じた統合手腕を
振るうべきである

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 買収した企業を統合する方法は、どちらのタイプの買収であるかによって異なる。一般的には、自社のビジネスモデルを改善するために買収したのであれば(LMB型)、被買収企業を自社のオペレーションに組み込むべきだ。しかし、相手の有望なビジネスモデルを狙って買収したのであれば(RMB型)、別のマネジメント構造の下に置いて、手を触れないようにすることが重要である。ギーク・スクワッドはベスト・バイの店舗のなかで事業を行っているように見えても、実際は小売事業とは別に運営されているサービス事業だ。そしていずれのタイプでも統合の際には、買収企業と被買収企業の避けがたい相反部分に注意しながら、慎重を期す必要がある。

 報道によれば、タンブラーの2012年の売上高は広告販売による1300万ドルのみであり、ビジネスモデルはほぼ存在しない。だから、ヤフーがタンブラーをRBM型で買収するのはまず不可能だ。一方で、タンブラーの利用者は活発で、数も増えており、若い。ヤフーが若者の集まる場所としての優位性を失ったいま、同社の中核となるビジネスモデル――長年注力してきた、検索とディスプレイ広告、およびコンテンツ連動型広告――にとって、タンブラーの資源(若年ユーザー)は非常に望ましいものである。したがって、この買収は明らかにLBM型だ。ヤフーは専門性と経営資源を活用して、グーグルがユーチューブに対して行ったのと同様に、タンブラーの利用者から収益を上げるようにすべきなのだ。

 しかし、タンブラーCEOのデイビッド・カープは、ヤフーの主力収入源の1つであるディスプレイ広告に対して公に抵抗を示している。こうした独立性が、この案件の経済性を損なう可能性がある。

 つまりこの案件は、買収する側のビジネスモデルのテコ入れにしかなりえないのに、ヤフーは被買収企業を独立させておく必要があると考えているのだ。これは問題である。

 企業が他社の経営資源を自社のビジネスモデルに統合しようと考えており、同時に両社の事業を切り離しておく必要性を感じているなら、おそらく買収は最善の方法ではないだろう。その代わりにヤフーが検討すべきだったのは、収益の一定割合を分配するレベニューシェア方式の提携や、少数株主としての投資である。10億ドル以上を投資したのだから、アナリストはタンブラーの業績状況を聞きたがるだろう。これにより、ヤフーには既存の得意分野を強化するようプレッシャーがかかる。つまり、広告主にとって魅力的なサイト訪問者を多数集めてくることだ。したがって、ヤフーはタンブラーに独自のやり方をさせておくのではなく、すぐに広告のプラットフォームとすべきだろう。ただし、タンブラーのファンが受け入れてきた価値提案を損なわない形で、それができるならば。

 大企業のなかで活動することの実情をタンブラーが知り、ユーザーがより多くの広告を見るのに慣れていくにつれ、自然に緊張が生じてくるだろう。しかしメイヤーとそのチームは、ためらってはならない。ヤフーにはタンブラーが必要としている資本がある。加えて、洗練された広告技術と、タンブラーが独自では獲得しえない規模がある。こうした優位性をただちに活用できなければ、戦略が台なしになってしまうだろう。


HBR.ORG原文:Where the Money Is in the Tumblr Deal June 3, 2013

 

スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイト マネージング・ディレクター
ダートマス大学の経営学博士・ハーバード・ビジネススクールの経営学修士。主な著書に『明日は誰のものか』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションの解 実践編』(共著)などがある。

 

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