BOP市場の消費者に学ぶ3つの教訓

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本誌2014年2月号(1月10日発売)の特集は、「日本企業は新興国市場で勝てるか」。新興国の貧困層を顧客に変える「ボトム・オブ・ピラミッド」の概念を最初に提唱したのは、インドが生んだ偉大な経営学者、C・K・プラハラッド(1941~2010)だ。その研究と実践は、戦略コンサルタントである娘のディーパ・プラハラッドに引き継がれている。彼女によれば、先進国企業はイノベーションと設計・デザインに関して、BOP市場から3つの重要な教訓を学べるという。


「ボトム・オブ・ピラミッド」(BOP)という概念がビジネス用語の1つとなってから、10年近くが経つ(ちなみに、これを最初に提唱したC・K・プラハラッドは私の父である)。それでも、BOPを市場として、およびイノベーションの源として理解するための苦心はいまもなお続いている。

 たしかに、BOP市場からイノベーションが生まれ、グローバル市場にも受け入れられた顕著な事例はある。グローバル企業であればGEの携帯型心電計などであり、新興国企業であれば〈チョットクール〉冷蔵庫などだ。しかし、ビジネスパーソンやデザイナーはBOPの消費者から学ぶべきことが依然として山積みである。

 BOP市場では手頃な価格は必須だが、それだけでは十分ではない。嗜好や要望が急速に変化する。だからこそ、BOP市場はデザイナーにとって貴重な学び場となる。利他主義的な動機によるケースを除き、デザイナーとイノベーターはBOP市場に関わることで、次の3つの重要なテーマに関して知見を得ることができる。

1.ユーザビリティ
 優れたアイデアも、人々が使いたいと思うようなデザインとして具現化されなければ、ただのアイデアのままだ。先進国では、ユーザビリティ(使い勝手)のハードルは非常に高い。商品の選択肢が多く競争も激しいからだ。幾多の競合商品を押さえて消費者の支持を獲得するには、優れたインターフェース、製品の使いやすさ、快適な消費者体験などが求められる。

 しかし皮肉なことに、BOP市場でのユーザビリティのハードルは、さらに高い場合が多い。そうなったのは、貧困層が多国籍企業から長い間相手にされていなかったからである。BOP市場の消費者は、手元にあるものを用いて、あるいはコミュニティの力を借りて、自分の道具を自分でつくるというやり方に慣れている。したがって、彼らは自分にぴったり合ったインターフェースの商品を、納得できる価格で、使用訓練の必要もなく手にするのが普通だと思っている。そして故障した場合には、地元で安価に修理してもらえる。

 加えて、貧困層はデザインのプロセスに自分が参加するのも普通だと思っている。ヨーロッパやアメリカでは、注文服は中~高所得者層にとってさえもぜいたく品だ。しかし、貧困層の消費者は着る人に合わせて服をつくるのが一般的である。パーソナルケア製品や小型の家電製品についても同様だ。インドの女性はハーブの粉を自分で調合し、自宅で基礎化粧品をつくる。また、各地域の電気店は、消費者のニーズに合わせて商品を修理したり変更を加えたりする。

 BOP市場の人口動態も、ユーザビリティの向上を促す要因となっている。インドや中国では、いまでも3世代以上の同居が一般的だ。アメリカでも不況の影響から、この傾向が復活しつつあり、2000年には全世帯の4.8%であったのが2010年には6.1%に増加している。共同生活のなかで購入が決められ使用されることから、BOP市場は複数世代にまたがるユーザビリティをテストするうえで確実な実験場となる。また、消費者の持つさまざまなスキルや、美に対する嗜好、異なる所得層におけるユーザビリティのテストにも適している。たとえば、携帯電話業界はエスノグラフィー(インタビューや観察などを通じて、行動様式などを調査する手法)を用いて、製品が家族の中で共有しやすいものかどうかを確かめている。

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