「ベスト経営書」から考える
良書は誰が決めるのか

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先日公表された「ハーバード・ビジネス・レビュー読者が選ぶベスト経営書2013」。果たしてここに登場した本が「良書」と言えるのか。「ベスト経営書」を発表した編集長が、良書とは何かを問い直す。

 

良書を定義する3つの考え方

 先日12月6日に本誌読者が選ぶ「ベスト経営書2013」を発表しました。すでに本誌でも掲載し、書店様でもフェアを開催してくださっているので、ご存じの方も多いと思います。

 今回のランキングは文字通り、弊誌の読者の方々に投票していただき、編集部はその集計結果をそのまま発表しました。

 こういうランキングを発表してみてあらためて思ったのは、「良書の定義」です。基本的に、どの本が良いと思うかは人の数だけ違っていいと思っています。その上で、ここでは3つの定義を考えらました。

 まず専門家の評価が高い本が「良書」であるという考え方です。専門家はそのジャンルに精通しています。また日頃からそのジャンルの多くの情報に接していて「目が肥えている」と言われます。長期間にわたって同じテーマを追い続けている人は、長い時間軸で「良書」を見いだす力がある、とも言えます。こういう専門家の評価に耳を傾ける価値は確かに大きいでしょう。

 2つめは、良書とは多くの人が読んだ本という考え方です。「読んだ本」を「買った本」と言い換えてもいいでしょう。要はマーケット思考の考え方です。よい製品とは消費者の支持を集めたものであり、すなわち売れた製品です。書籍をいわゆる「製品」と定義することに抵抗がなければ、この考え方はすっきりするでしょう。しかしこの考え方には出版業界でも読者の間でも賛否両論が常にあります。「よい本と売れる本は違う」という言葉が代表するように、ベストセラーのランキングを見て「良書ランキング」だと信じる人はかなり少数派と思われます。

 3つめの考え方は、時代を超えて読まれる本という定義です。古典の価値が普遍であるように、長く読み継がれる本は時代を超えた普遍性がある。これを価値の基準に据えるという考え方です。

 私個人はこの3つめの考え方を取っています。専門家の評価は確かに参考になりますが、「イノベーションのジレンマ」と同じような罠を感じます。つまり作り手側の評価がかならずしも受け手側の評価と合致しないケースが山ほどあるからです。経営書の場合、専門家は経営学者であり経営コンサルタントであり、我々経営書の編集者となるでしょう。専門家の間の評価と消費者の中の評価にずれがあることは、むしろ健全なことで、2つの評価が相互に引っ張り合いながら、スパイラル・アップしていくことでしょう。

 2つめのマーケット思考の考え方は、基本的に賛成です。「よい本と売れる本は違う」という言葉を聞くと、いつも違和感を抱きます。売れなかった本を「良い本」と定義する基準は何か。内容がよくて売れなかったら、それは作り方に問題があったのではないか。素晴らしい原稿をもとにした本が在庫過多となるのは資源のムダ使いをしたことになります。製品として技術や機能に優れていても売れないものは山ほどあります。それと同様の議論に思えます。ただ、諸手を上げて賛成できない点は、「月間」「年間」という一定期間に売れた本を評価することに対してです。1か月に10万部売れた本と100年間で100万部売れた本のどちらを書籍として評価するかと言われれば後者です。

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