イノベーションを興すのに
友だちはいらないんです。

瀧本哲史さんインタビュー

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京都大学客員准教授であり投資家でもある瀧本哲史さんが、4冊目の著書『君に友だちはいらない』を出版した。誰もが容易につながるネット時代に「友だちはいらない」と煽る、その趣旨を聞いた。

 

『七人の侍』をビジネス書にしてみたら

――『君に友だちはいらない』は、タイトルといい装丁といい、従来のビジネス書ではなかった見せ方だったので初めて書店で見て驚きました。

瀧本 はい確信犯的に新しい試みをしました。1冊目の『僕は君たちに武器を配りたい』は書名を小さくして、内容がわかるように表紙に文字を入れました。今回はそれを逆にして、書名以外、ほとんど文字を入れないようにしました。その代わりビジュアルを入れて内容のイメージを膨らませてもらおうと思ったんです。

――そのビジュアルが映画『七人の侍』というのが奇抜です。

瀧本 『七人の侍』はこの本の象徴的なアイテムです。この映画はとてもよくできていて、世界中で受け入れられました。カストロには農民を指導する革命家の話しとしてとられたし、イタリアでは銀行を襲う盗賊映画として『黄金の七人』という映画になりました。これはその後、『ルパン3世』のモデルになったとも言われています。このように同じ作品がまったく違う解釈をもたらした映画でもあるんです。またこの映画自体とても画期的で、本書のテーマであるイノベーションを起こすためのチームづくりに、非常に親和性がありました。

 まず『七人の侍』は1954年にできたのですが、制作過程からユニークです。制作会社である東宝では当時労働争議があってごたごたしていました。俳優もうまく最初に予定していた人が使えなくて、三船敏郎が抜擢されたんですが、彼はこの映画でスターダムにのし上がりました。

 またそもそも時代劇はGHQがいなくなるまで作れなかったんですが、それが解禁となり黒沢明がつくった新しい時代劇がこれです。従来の時代劇は歌舞伎の動画版みたいなものでしたが、黒沢は徹底的にリアリズムを追求する。そこにもイノベーションがあったのです。相当お金もかかっています。

――よくそれだけお金をかけることができましたね。

瀧本 それはからくりがあったんです。黒沢監督らは途中まで作って試写会やったんです。そうしたら当然、話しの途中で終わってしまいます。「おい、どうしたんだ」と言われた黒沢は、「はい、ここでお金がなくなってしまいました」と(笑)。会社もそこまでが非常によくできていたので、叱るにしかれず、しょうがないから予算増やして、最後まで完成させたんです。会社としたらここで予算を増やさないと上映できないし、費やした予算もすべてムダになってしまう(笑)。

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