雄弁な人が陥りがちな、セールスの落とし穴

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見込み客に自分自身や商品を売り込む際に、陥りがちな落とし穴がある。自己アピールに躍起となり、「同調」(相手への共感)を忘れてしまうことだ。ブレグマンがみずからの失敗をもとに、教訓を示す。


 ロビンは私の親しい友人だ。大手医薬品会社の幹部である彼女は、子会社のCEOであるダンにコンサルティングを提供してほしい、と私に打診してきた。ダンをよく知る彼女は、3人で会う機会をセッティングしてくれるという。ダンは私にとって、とびきり有望な見込み客であった。

 見込み客に自分を売り込むプロセスで、私は以下のような一連の判断を行った。当時は、どれもきわめて妥当な判断だと感じていた。実を言えば、その気持ちは今も変わらない。ここでその顛末をお伝えしよう。

1.ダンの了承を得たうえで、ロビンと私は事前に何度か会い、ダンの人物と置かれた状況について話し合った。複雑な状況にある会社でCEOに就任したばかりのダンは、うまく力を発揮する必要に迫られていた。彼が直面している課題を、私は面会前にすでに把握しており、アドバイザーとしての私の本領が発揮できそうな手応えを感じていた。

2.面会当日、ロビンとダンは予定より遅れて到着した。60分を予定していた面会時間は、20分に短縮された。「大丈夫です。事情はすでに伺っていますから、すぐに本題に入れます」と私は言った。

3.私はオフィスの空いている椅子に腰かけた。しかし座高が低すぎると感じたため、とっさに座面を調度よい高さまで引き上げた。

4.ダンは私の新刊への称賛で会話の口火を切り、ブログを楽しみに読んでいると言ってくれた。私はなおのこと、さっさと本題に入らなくては、と感じた。

5.ダンの置かれている状況について、私が理解している内容を手短に伝えた。その内容が正しいことを彼は認めたので、私はどう問題にアプローチするつもりかを説明し始めた。

6.途中でダンは私に質問をした。その時、私は答えるのをためらった。ロビンは、それについては後ほど話してはどうかと提案してくれた。しかし私はダンをがっかりさせたくなかったので、ロビンに感謝しつつ、「ぜひお答えしましょう」と言って考えを伝えた。

 私の行動や発言、考えたこと、感じたことのどれも、特に的外れなものではなかった。実際、私の立場からすれば、すべてのステップ(私が下した判断の1つひとつ)が現実的で、理にかなっていて、適切なものだった。

 だからこそ、私は失敗したのだ。

 私は、自分の観点からのみ話を進めた。しかし、ダンはダンの観点があった。彼からみれば、私が自身の観点のみに立脚していたという事実は、交渉決裂を意味するものだった。

 問題はどこにあったのか? 私は相手に同調していなかったのだ。

 ダニエル・ピンクは、名著『人を動かす、新たな3原則―売らないセールスで、誰もが成功する!』の中で、他者を動かすための3大原則の1つとして「同調」(attunement)を挙げている(HBR.ORGのインタビュー音声はこちら)。

 同調とはつまり、周囲の人や状況と調和している状態だ。同調していれば、好奇心をそそられ、質問を投げかけ、答えに耳を傾け、共感する。

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