平野正雄氏による
「経営者がすべきこと ~オリンパスに学ぶ~」

DHBR勉強会レポート

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ハーバード・ビジネス・レビューでは、毎月、講師をお迎えして勉強会を開催している。著名な講師を囲み、少人数によるディスカッションを中心とした勉強会は、議論の濃さと活気で好評だ。今回は早稲田大学商学学術院 教授の平野正雄氏を講師に迎え、「『よい経営』とは」というテーマで、プレゼンテーションを行っていただいた。

【テーマ】「よい経営」とは
【 講師 】平野 正雄氏(早稲田大学商学学術院 教授)
【 日時 】2013年12月2日(月) 19時~20時30分
【 場所 】d-labo コミュニケーションスペース(ミッドタウン・タワー7階)

 

DHBR勉強会について

 ハーバード・ビジネス・レビュー(DHBR)では、毎月1度、講師をお迎えして勉強会を開催しています。この勉強会は、DHBR誌に寄稿いただいた方を講師としてお招きし、執筆テーマに沿ったプレゼンテーションの後、参加者の方々とディスカッションを行う形式をとっています。アットホームな会場、20名という少人数、隔たりのない講師の方との近さという贅沢な空間が、ほかにはない活発な議論を誘い、これまで参加いただいた方々からも好評をいただいております。また、参加者の年齢や職種も幅広い層にまたがっており、大変刺激的な会となっています。

 

ケーススタディ:オリンパス事件

 今回のテーマは「よい経営」。講師にはマッキンゼー日本支社長を務められた、早稲田大学商学学術院教授の平野正雄氏をお招きし、よい経営とは何かについて、お話しいただきました。


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平野 正雄(ひらの・まさお)
 1987年から20年間にわたり、マッキンゼー・アンド・カンパニーに勤務。経営コンサルタントとして、多くの産業分野の企業の経営戦略立案、グローバル化推進、企業買収、組織改革など多様なプロジェクトに責任者として従事。この間、1993年にパートナー、1998年にはディレクターに就任。また、1998年から2006年までマッキンゼー日本支社長。 2007年11月にカーライル・グループ日本共同代表。日本企業向けのプライベート・エクイティ投資に従事。2012年4月から現職。合わせて、東京大学大学院非常勤講師などを兼務。
1980年東京大学大学院修士(工学系)、1986年スタンフォード大学大学院修了(工学系)、2008年東京大学大学院工学博士。


 経営とは、また会社とは何なのか。根本的なこの問いを考えるにあたり、平野氏はオリンパス事件を事例として取り上げられました。まずは、オリンパス事件のあらましと背景について、メディアの報道内容を紹介しつつご説明いただきました。

 オリンパスの社長に就任したマイケル・ウッドフォード氏は、就任後に同社の長年にわたる不正会計を知り、会長の菊川剛氏を問い質しましたが隠ぺいは続き、さらに就任半年でウッドフォード氏は「経営スタイルが合わない」という理由で解任されました。同氏はそれを不服として、海外メディアを通じて同社を告発しました。
 この一連の動きが大きく報道され、オリンパス株は急落、経営陣も不正経理を認めて辞任する事態となりました。しかしその後、ウッドフォード氏は取締役の一新と自身の復権を求めて委任状闘争を仕掛けましたが、途中で日本側の株主の賛同を得られないと判断して撤退。一方で、現在のオリンパスは主力の医療用光学機器を武器に、順調に株価を以前の水準まで戻しています。

 

菊川氏とウッドフォード氏、双方の立場で考える

「ここで皆さんに問いを投げかけたいと思います」と平野氏。スクリーンに映し出されたのは次の6つの質問でした。
1.なぜ、ウッドフォード氏は隠ぺい問題を知った時に、菊川氏らに辞任を迫ったのでしょうか。
2.あなたはウッドフォード氏が取った行動を支持しますか。
3.菊川氏は何を守ろうとしていたのだと思いますか。
4.あなたが菊川氏の立場だったら、前社長から初めて隠ぺい問題を告げられた時、またウッドフォード氏に詰問された時、どのように行動していたでしょうか。
5.銀行が主導して事の収拾に当たったことを支持しますか。
6.3代もの社長が隠ぺいを重ねてきた組織体質上の問題は何だったのでしょうか。

 平野氏が最初の2つに絞って質問を投げかけたところ、双方の立場から意見が出ました。「重大なコンプライアンス違反であり、自分の手に負えないと判断したからではないか」「従業員を守ろうとしたのではないか」といったウッドフォード氏に同調する意見が上がる一方、「株主を守るためには上場を維持しなければならないし、事業継続には必要なことでもあった。ウッドフォード氏はそうした実態を理解していなかったのではないか」「ウッドフォード氏は単に、不正を明らかにすることで支持を集めようという私欲のためだったかもしれない」という菊川氏の立場に理解を示した意見や、ウッドフォード氏の姿勢についての疑問も出ました。

 そして参加者にウッドフォード氏の行動を支持するかどうか挙手を求めた後、平野氏はさらに2つの追加情報を紹介します。1つは銀行主導による救済の際、銀行側の「これ以上の不正、不法行為はないか」という問いに、菊川氏が「ありません」と断言。それを受けた銀行は第三者委員会の設置を求めたうえで「事業と従業員は何とか守る方向で進めたい」と回答した、というやり取り。2つ目はウッドフォード氏とオリンパスが約12億4500万円という金額で和解した、というニュース。
 この情報を与えた後、平野氏はさらに質問を重ねられました。
7.この追加情報を得て、銀行やウッドフォード氏の行動に対する考え方は変わったか。
8.会社、あるいは経営、経営者とは何だと考えるか。

 最後の問いについて、比較する対象として挙がったのは、同じく不正会計によって破綻に至ったエンロンでした。片や生き残った日本企業と、片や破綻したアメリカ企業。その差はどこにあったのでしょうか。
 それは日本と欧米における会社を定義する概念の違いにありました。

 

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