経験は創造性を邪魔するか

BCG アラン・イニー氏、木村亮示氏 インタビュー

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多くの戦略コンセプトを提唱してきたボストン コンサルティング グループ。新刊『BCG流 最強の思考プロセス』日本経済新聞出版社、2013(原題 “Thinking in New Boxes”)では、創造性を刺激するための思考技術を5つのプロセスで紹介している。同書の共同執筆者であるアラン・イニー氏と、序文を執筆された木村亮示氏にお話を伺った。

 

まずはすべてを疑うことである

編集部(以下青字):本書では、今ある思考の枠組み(ボックス)を捨て、新しいボックスを得るための5つのステップ(「すべてを疑う」「可能性を探る」「発散する」「収束する」「徹底的に評価する」)を挙げておられます。最初のステップとなる「すべてを疑う」ということ自体が非常に難しいことだと思いますが、どのようにすれば身につくでしょうか。

イニー(敬称略):すべてを疑うことは確かに易しいことではありませんが、まずは自分たちのボックスに気づくことです。自分のなかにある想定、既存の手法に対する制約といった前提条件を知っておかなければ、創造的なものは得られません。ましていまの世は、いいアイデアであっても、そのライフスパンは短くなっています。そのような時代にあって、創造力が重要であることは多くの人が理解しています。しかし大半の人はこの「すべてを疑う」というステップを飛ばして考え始めるため、創造的なものにたどり着けずにいます。

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アラン・イニー(Alan Iny)
ボストン コンサルティング グループ(BCG)ニューヨーク事務所グローバル・トピック・スペシャリスト。クリエイティビティ、シナリオプランニング等のエキスパート。企業幹部などを対象にクリエイティブ手法に関するトレーニングを行っている。BCGストラテジー・プラクティスのリーダーシップチーム・メンバーとして、イノベーション、チェンジマネジメント、組織改革等のプロジェクトにも携わる。コロンビア・ビジネススクールMBA。

木村(敬称略):このような姿勢は、訓練して身につける能力というよりは習慣です。異なる考え方や背景を持った人と話すということを定型化することで、気づきを得られる機会が増します。あるいは、一見関係ないと思えることについても、「仮に関係があるとしたら」と考える癖をつけるなど、行動の習慣化がカギとなります。そうすれば「すべてを疑う」ことが習慣となって、創造性の高い思考を得ることができます。

――創造力はすべてのビジネス・パーソンに求められるものでしょうか。

イニー:その通りです。創造力というキーワードが与えられると、どうしても新しい製品の開発やサービスの提供といったイメージに陥りがちですが、そうではありません。既存のアイデアについて、新しい視点で見直す能力が創造力なのです。
 創造力は事業開発や商品企画だけでなく、コスト削減や組織設計といったビジネスシーン、さらにはいわゆる「中年の危機」のような人生のなかにも求められるものです。いかなる問題に対しても非常に有用な新しい視点を与え得るもの、それが創造力であり、すべての人が持つべきものだと思います。

 

思考を広げるための環境を整えよ

――「すべてを疑う」ことを意識しても、気づいていないことに気づくことは至難の業です。2つ目のステップ「可能性を探る」において予測シナリオを考える時に、起こり得ない未来を予想することも容易くありません。どうすれば思考を広げられるでしょうか。

イニー:とてもいい質問ですね。残念ながら、必ずしもすべてを疑う姿勢を持ったからといって、いい結果が出せるということではありません。素晴らしいシナリオを用意したところで、誰も正確な将来を予測することなどできないのです。
 そこで重要になるのは、自分の視点をもう少し広く持つことです。違うレンズで物事を見てみましょう。シナリオを描くときに想定するメガ・トレンドについても、自社と関係ないように思えるものを新しい視点で考えるのです。そうすると、今まで見えていなかったことも見えてくるようになります。そうしてすべてを疑い、あらゆる事態を想定し、よりよい備えをすることが、よりよい結果を生み出すのです。

――視野を広く持つというのも、実践はなかなか難しいものですね。特に年齢や経験を重ねるにつれ、視野狭窄が起こりやすいように思います。

イニー:一般的には確かにその通りでしょう。ただ、年齢に関わらず、人の思考や行動は時間軸とともに変化するものです。また、若くても自分の考えに固執する人もいれば、年をとっても非常に柔軟な考えを持っている人もいることも事実です。ですから、年齢による影響というよりも、どんな人であっても視野を狭めてしまうことが起こり得ると考えるべきでしょう。特に成功体験にとらわれると、視野を狭めることになりかねません。
 例えば、ヘンリー・フォードはモデルTと呼ばれる製品で自動車業界に大きな変革をもたらしました。彼自身、素晴らしいイノベータ―だったのですが、ここでボックスに閉じこもってしまいました。競合するゼネラル・モーターズが社会の変化を汲み取り、さまざまなカラー・バリエーションをそろえ、毎年モデルチェンジを繰り返したのに対し、フォードは一貫して黒のモデルTにこだわり続けたのです。その結果、フォードは非常に大きな成功をしたにもかかわらず、倒産の危機に瀕することとなりました。ですから、年齢というよりも経験を忘れることが重要となりますね。

 

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