【書籍拝見】主催者と聴衆の期待を洗い出す
10のポイントと連想マップ

『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』第3回

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スピーチの成功は、まず相手を知ることから。主催者の期待と聴衆の期待を洗い出すにはどうすればよいか? 本ウェブ連載のもととなった書籍『思いが伝わる、心が動く スピーチの教科書』からの無料公開、最終回。

 

何のために設定された場か、主催者は何を求めているか

 スピーチは多くの人が集まる場で行われるわけであり、そこには必ず主催者がいます。主催者はある意図を持って聴衆を集め、ある期待を持ってあなたにスピーチの依頼をしてきているはずです。つまり、壇上では話し手であるあなたが脚光を浴びることになりますが、その陰に主催者の尽力があることを忘れてはいけません。

 主催者は、この場を企画する際に、スピーカーを誰に頼もうかと悩んだはずです。そして、「この人なら、私たちが聴衆に気づいてほしいと思っていることを話してくれそうだ」「この人なら、きっと聴衆を満足させてくれるだろう」といった期待をもとに依頼してきたわけです。

 場と主催者について理解するには、以下の4点を確認するとよいでしょう。できる限り、責任者に直接会ってヒアリングすることが望ましいです。

①スピーチが行われるのはどのような主旨の場か?
②主催者は誰か?この機会を通じて、何を達成しようとしているか?
③主催者はスピーカーには何を期待しているか?
④主催者との接点は何か? どんな点に配慮すべきか?

 それでは、ジョブズのスピーチでこれらの点を考えてみましょう。内容はあくまで想像の範囲ですが、聴衆と場を理解する際の参考になるはずです。

①スピーチの場
スタンフォード大学全学の卒業式での祝賀スピーチ。毎年、世界的に著名なゲスト・スピーカー1人が招かれている。

 出席者は、約3万人。卒業生と、その家族が参加する。

 スピーチ内容は、大学よりプレスリリースとして発表され、メディアに取り上げられることが多い。また、話の模様は後日、大学よりユーチューブに公開され、毎年、全世界からの注目を集める。

②主催者の意図

 スタンフォード大学運営当局が主催。社会に巣立つ卒業生に、これからの人生の荒波を航海していくうえでの心の拠りどころとなる話を提供したい。
 長く記憶に残るインパクトのあるスピーチを通じて、大学と卒業生の絆を深めたい。

③スピーカーへの期待
 一度は追放されたアップル社に復帰し、iPodとiTunesで音楽の楽しみかたや購入のしかたを根底から変え、会社の業績を立て直すなど、自らの手で運命を切り拓いてきた稀代な経営者であるジョブズに、卒業生をインスパイアしてほしい。

④主催者との接点
 スタンフォード大学は、アップル製品を積極的に購入し、長年、ビジネスをサポートしてくれている顧客。また、妻のローリーンは、同大学のロー・スクールの卒業生でもある。 上記の点を確認することで、実際にどのような内容の話をすることが望ましいか、勘どころをつかめてくることと思います。おそらくジョブズは、次のようなことを考えたのではないでしょうか。

「シリコンバレーの知の拠点スタンフォード大学の卒業式祝賀スピーチを行うことは大変名誉なこと」
「社会に巣立つ卒業生にとって大切な思い出となる機会であり、印象深い話をする必要がある」
「スタンフォード大学は、アップル社の創業当時からのサポーターであり、妻であるローリーンの母校でもあるので、いいスピーチにしたい」

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