起業を支援してきた二人が語る
「世界に羽ばたけ!日本発ベンチャー企業」

特別対談
日本アイ・ビー・エム相談役
北城 恪太郎
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インフィニティ・ベンチャーズLLP 共同代表パートナー
小林 雅

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「ベンチャー企業が育ちにくい」と言われてきた日本のビジネス環境だが、最近は変化も見られる。起業のハードルは次第に下がってきたが、なお残る課題も少なくない。また、ベンチャー企業が次の成長ステージに進むうえでの課題もある。「ヒト」や「カネ」に関する課題、それらを克服するためのアプローチなどについて、ベンチャー企業のサポートを続けてきた二人が語り合った。

創業環境の変化と
起業を志す若者たち

日本アイ・ビー・エム
相談役
北城 恪太郎氏

きたしろ・かくたろう。1944年生まれ。1967年慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。常務取締役などを経て93年に代表取締役社長に。その後代表取締役会長となり、IBMアジア・パシフィック プレジデントも務める。2012年より現職。経済同友会終身幹事、国際基督教大学理事長、文部科学省中央教育審議会委員なども兼務。

北城 以前から、日本ではベンチャー企業が育ちにくいと言われています。そんな状況を変えたいと思い、私自身、さまざまな形でベンチャー育成に向けた取り組みを続けてきました。たとえば、私が日本アイ・ビー・エムの社長を務めていた時代には、ベンチャー企業に特化したサポート・チームをつくりました。そんな企業の成長がビジネスの拡大にもつながるという狙いもありますが、こうした活動は社会の活力を高めるうえでも非常に重要だと考えたからです。ベンチャー・キャピタリストとして活躍する小林さんは、最近の創業環境をどのように見ていますか。

小林 創業環境は大きく変わりつつあると感じます。特にネットベンチャーにとっては、クラウドの普及を背景にあまりお金をかけずに創業できる時代になりました。また、若い人たちのマインドも非常に積極的です。当社はIT業界の経営者、経営幹部向けに「インフィニティ・ベンチャーズ・サミット(IVS)」というイベントを開催しているのですが、起業に関心のある学生向けの無料イベントも行っています。そんな学生たちの意欲的な姿を見ると、「世の中、変わったな」と感じます。外の世界を見たいと留学する若者、社会起業家を目指す若者にもよく出会います。

インフィニティ・ベンチャーズLLP
共同代表パートナー
小林 雅氏

こばやし・まさし。東京大学工学部卒業後、1998年アーサー・D・リトル(ジャパン)に入社し、ベンチャー・インキュベーション事業の立ち上げなどに従事。エイパックス・グロービス・パートナーズ(現グロービス・キャピタル・パートナーズ)パートナーを経て、2007年に独立し、約100億円のベンチャー・キャピタル・ファンドを設立。インフィニティ・ベンチャーズ・サミットの企画・運営責任者を務める。

北城 起業のハードルを下げるとともに、起業後のビジネス展開を加速するクラウドのインパクトは大きいですね。いま、アイ・ビー・エムだけでなく、世界中のITベンダーがクラウドサービスを拡充する中、ネットベンチャーはもちろん、程度の差こそあれ、あらゆる企業がそのメリットを享受することができます。アイ・ビー・エムも先ごろ、世界中の企業に対してクラウド基盤を提供しているSoftLayer Technologiesの買収を発表しました。グローバル展開のスピードを速めるインフラ環境はさらに充実したものとなることでしょう。一方で、日本から海外市場を目指す若い企業も増えていますし、最初からグローバル・マーケットを狙っている企業もあります。小林さんは、海外への事業展開で成長している企業、あるいは苦労しているそんな経営者の話を聞くことも多いのではないですか。

小林 最も大きな課題の一つは、やはり「ヒト」だと思います。大企業、ベンチャー企業を問わず、国内の社員よりも海外で働く社員のほうが多いという日本企業は少なくありません。そんな組織においていかに社員のやる気を引き出し、それを競争力につなげていくか。それはIVSの大きなテーマの一つでもあります。そこで、実際に海外拠点のマネジメントに携わった経験を持つ方に話をしてもらう機会などを設けています。

北城 グローバル経営の能力を持つ人材をいかに育てるか。現地法人については現地の優秀な人にマネジメントを任せるのが望ましいと思いますが、その場合には本社側にも努力が求められます。一つ重要なのは英語の問題です。本社の幹部が英語を話せなければ、せっかく登用した現地の幹部が孤立してしまいます。通訳を入れて会議をすることは可能ですが、それ以外の場でコミュニケーションができなければ長く活躍してもらうのは難しいかもしれません。

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