傾聴と対話から成長の糸口をつかむ

部下の能力と生産性を上げるために、上司がまずやるべきは「問いかけによる対話」であるという。ごくシンプルな問いかけが、よきマネジメントへの道を開く。


 自分の部下やチームに、次のシンプルな質問を最後にしたのは、いつだろうか。

「あなたが力をつけるために、何か私に手伝えることはありませんか?」

 優れた上司でいるために、これ以上に重要な質問があるだろうか。部下をうまく管理し導くためには、彼らが仕事で何を必要としているのかを把握しなくてはならない。だからこう尋ねるのは当然なのだが、現実には、上司によるこの問いかけは十分になされているとは言いがたい。

 この質問には、特にはじめのうちはさまざまな回答が返ってくるだろう。まず、無反応の場合がある――「ないよ、そんなもの。こっちに構わないで、自分の仕事に専念してくれ」と心中つぶやく部下もいるだろう。そして、たいして力になれない要求も寄せられる。プライベートの問題、あなたには変えられない会社の方針、不愉快な同僚についての苦情。そして対応できない、もしくは対応すべきでない個人的な要求――たいした業績を上げていない部下からの、昇給願いなど――もあるだろう。すぐに応えられない場合でも、寄せられた要求のすべてを検討してみる必要はある。妥当な要求には対処を約束すべきだが、部下自身の仕事を上司に任せようとする試みは、認めてはならない。

 あなたに対する間接的な、そして時には直接的な批判が返ってくることもある。これらに対しては、反論や自己弁護をせずに自分の考えを説明しよう。批判が妥当であれば、間違いを認める。せめて「それについては考えてみます。教えてくれてありがとう」という言葉を添えるとよい。

相手と話し合い、傾聴し、説明し、教育しよう。そして何よりも、部下やチームの言っていることを理解することが重要だ。思いやりを示しながらも、率直に。会社の方針や給与等級を変えられない場合には、それを説明する。相手の意見に賛同できない場合には、丁重な態度で話し合おう。これらは、あなたと部下、もしくはチーム全員にとって学びの機会となる。

 しかしこれらの回答からは、部下のパフォーマンスを実際に高める方法もきっと見えてくるはずだ。そのためには、対話のなかで相手の意見を注意深く聞き、丁寧に掘り下げ、聞きたくないことにも耳を傾け、自分の変えるべき部分を認める態度が必要になる。相手の言う通り、実際に一歩下がって仕事を任せたままでいるほうがよいと判明するかもしれない。あるいはもっと深い関与が必要なのかもしれない。協働のプロセスを一部変更する必要があるのかもしれない。他の部署のマネジャーに、彼女の部下がいかに非協力的かを告げるべきなのかもしれない。こうした対処ならば大抵は容易であり、すぐに効果を生むことができる。

 問いかけによるこれらの対話を実践してみると、それほど多くの時間を要しないことに気づくだろう(例外はあるが)。そして、これらの対話は見返りをもたらしてくれる。信頼を築き、協働のあり方を改善して成果を高め、障害を特定して取り除くことができるのだ。

 対話によって部下の考えが明らかになるため、あなた自身のパフォーマンスも向上する。あなたにとって好ましいか否かに関係なく、人にはそれぞれの考えがあり、あなたはそれを知る必要がある。とりわけ、上司として部下に何を期待されているのかを理解しなくてはならない。部下の期待を不明のまま、あるいは不合理なままにしておけば、彼らの期待を裏切り続けることになり、こちらから新たな要求を行うこともできなくなる。

 多くの組織において、要求とは上から下へと一方向に流れるものとされている。実際には下から上になされる要求・期待も存在するのだが、それを重視する組織は残念ながら少ない。上司という存在は、相互関係の上に成り立っている。あなたが部下の要求を理解し応えようと努める時、部下もあなたの期待に応えるようになるだろう。


HBR.ORG原文:The Most Important Question a Manager Can Ask April 18, 2011

 

リンダ・A・ヒル(Linda A. Hill)
ハーバード・ビジネススクールのウォーレス・ブレット・ドナム記念講座教授。経営管理論を担当。主な著書にBeing the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。

ケント・ラインバック(Kent Lineback)
著述家。リンダ・ヒルとの共著Being the Boss: The 3 Imperatives for Becoming a Great Leader(邦訳『ハーバード流ボス養成講座 優れたリーダーの3要素』日本経済新聞出版社)がある。
 

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