「押しつけがましい」セールスから
「売らない」セールスへ

ダニエル・ピンク氏 来日特別講演レポート(前編)

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2013年9月28日(土)、ベストセラー作家のダニエル・ピンク氏と、同氏の新著を翻訳した経営コンサルタントの神田昌典氏による講演会が開催された。テーマは「セールス」。今や世界中で引っ張りだこのピンク氏であるが、ビジネス界の先を読むことで有名な同氏が、なぜセールスに目をつけたのか。「すべての人がセールスを行っている」というピンク氏の主張は、どんな意味を持っているのか。2回にわたり、講演会の内容をレポートする。

 

ピンク氏の著作はビジネス界の常識を創りだしている

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Daniel H. Pink(ダニエル・ピンク)
エール大学ロー・スクールで法学博士号取得。クリントン政権下でゴア副大統領の首席スピーチ・ライターなどを務める。フリーエージェント宣言後、世界各国で講演活動を行い、各種メディアにも精力的に寄稿。2013年、「Thinkers50」に選ばれる。著書に『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社)、『ハイ・コンセプト 』(三笠書房)、『モチベーション3.0』『人を動かす、新たな3原則』(以上、講談社)がある。

 本誌2014年1月号(12月10日発売)にもインタビューが掲載されているダニエル・ピンク氏。同氏の著作はいずれもベストセラーとなったが、神田氏によると、ピンク氏の新刊は3年後のビジネス界の常識をつくっているという。

『フリーエージェント社会の到来』(ダイヤモンド社、2002年)では会社にとらわれない生き方を説き、起業家精神が広く浸透することとなった。『ハイ・コンセプト』(三笠書房、2006年)では論理的思考から創造的思考への転換を取り上げ、マインドマップやデザイン思考が注目を集めた。『モチベーション3.0』(講談社、2010年)では金銭的報酬よりも精神的報酬を重視する社会を描き、NPOでのリーダーシップを発揮する人が増えた――。

 このように、ピンク氏が気づき、拾い上げた変化はやがて大きな潮流となって、社会に変革をもたらしている。そしてピンク氏が捉えた次なる変化は、『人を動かす、新たな3原則』(講談社、2013年)のテーマである「セールス」である。つまり、神田氏の観察に基づいて言えば、3年後にはセールスのあり方が一変しているかもしれないのだ。

 

セールスの姿はこの10年で劇的に変化した

 セールスという言葉のイメージには「押しつけがましい」といった否定的な形容詞がついて回るが、これからのセールスにそのような言葉は相応しくない、とピンク氏は語る。今までのセールス、特に20世紀に行われていたセールスは、売り手と買い手の間には情報格差があった。そのため、圧倒的な情報を武器に迫ってくる売り手に対して、買い手はその情報の真偽すら確かめられないまま言いなりになってしまう。買い手は売り手に対して警戒心を持ち、売り手は買い手を何とか説得しようという対立構造が生まれていた。

 しかし「ここ10年とその前の100年を比べると、劇的な変化が起こっています」とピンク氏は評価する。21世紀になり、情報の均衡化が進むにつれ、買い手側に選択肢が多く生まれ、セールスの主導権は売り手から買い手に移ってきたという。実際、SNSなどを通じてあっという間に情報収集ができてしまう環境が生まれたことで、不誠実な売り手はどんどん市場から締め出される状況になった。情報の持つ力は大きくなり、そして拡散するスピードも速くなった。もはや情報を武器にした、昔ながらのセールスは通用しなくなったのだ。

 

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