無一文にならずに顧客ロイヤルティを獲得する

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顧客を喜ばすために従業員に権限を持たせる――とはいえ、何でもありにしては無一文になってしまうのではないか。経営陣や管理職のそんな不安は、杞憂である。ベイン・アンド・カンパニーの好評連載、第11回。

 

「従業員に権限を持たせなければいけないと言うが、彼らに顧客が喜ぶことを何でもやらせる訳にはいかない。それでは我々は無一文になってしまう。我々はビジネスをしているのだから、お金を儲ける必要があるのだ。」

ベイン・アンド・カンパニーで顧客戦略の仕事をしていると、企業の経営陣がそれぞれの言葉で同じような懸念をあらわにすることが頻繁に起きる。彼らは、従業員が値引きを行い、原則を破り、顧客に付き合う時間を長くしすぎてしまうことを懸念している。

 実際に、彼らの言っていることは正しい場合が多い。

 実行するのが「現場職員に権限を与える」ことだけであれば――顧客を喜ばせるために従業員に自由度を与えるとすれば――彼らはほぼ間違いなく株主価値と顧客満足の間で間違ったバランスを取るようになるだろう。あるリテール銀行は、コールセンター職員に顧客を「喜ばせる」ように指示を与え、どの顧客に対しても追加の承認を必要とせずに手数料150ドルを免除しても良いとした。結果はどうだったか?顧客満足度は少し上昇したが、手数料収入は大幅に低下した。

 このようなパターンが一般的だと感じられるのは何故だろうか?一方では、現場スタッフが顧客の信頼を得るためにはもっと自由度が必要であることは明らかだ。従業員が顧客にとって「正しい」行為をすることを妨げているお役所仕事を排除しなければならないことも分かっている。だが、従業員は多くの場合、破産を免れながらこれを達成する経験、判断力、そして規律を持っていないのだ。

 我々の経験上、現場スタッフに自由度を与えることの成功への鍵は、業務上のフレームワークを与えることだ――そして、そのフレームワークにおいて上手く機能しているかどうかに関するフィードバックを提供することだ。従業員が、明白で理解可能な結果を目指して自主的に仕事を進め改善できるようになるように支援するのだ。

 TD銀行の例を見てみよう。TD銀行は、北米におけるリテール銀行の顧客ロイヤルティ先駆者だ。同社はリテール金融において長期にわたって持続的成長を遂げ、それは何年もの間事業拡大や新店舗出店の資金源となってきた。同銀行では、全従業員が顧客ロイヤルティの獲得という事業目的を理解し、全ての仕事において体系立った試みと突発的な試みの両方を促進して顧客を喜ばせるように設計されたフレームワークを有している。

 全従業員が、TD銀行が目標とする事業結果を理解しているという企業文化があり、その目標をどのようにして実行するかに関する明白なルールが存在し、各従業員がその成功に如何に貢献しているかに関する頻繁なフィードバックが提供されている。一つの事例は、TD銀行の「まずイエス、次にノー」ルールだ。顧客と接する全従業員が、顧客からのリクエストに出来る限り答えて満足させることが仕事であると教えられる。銀行の方針に沿う範囲内においては、イエスと言う方法を見つけ出すことは従業員が自主的に行うように期待されている。

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