「盗み合い」を促進し、
社内にナレッジ市場をつくれ

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本誌2013年12月号(11月9日発売)の特集は「理想の会社」。HBR.ORGの関連記事第3回は、縦割り組織の壁を破り、優れたアイデアや慣行を共有する方法を紹介する。ナレッジ共有のために洗練されたツールを導入したのに、組織横断的な共有・交流がなかなか進まない。こんな事態を打破するのは、需要と供給を刺激する「ナレッジ市場」を社内につくることだ。


 数年前に私は、ある企業で社内コンテストの立ち上げをサポートした。この組織は、非常に縦割りでタコツボ化した大手グローバル企業だった。コンテストの目的は、社内でアイデアや情報、ベスト・プラクティス、革新的なプロセスを共有すること。この企業では、各部門や職能が、自分たちに関係ないものは無視してかまわないという風潮があり、経営陣もそのことを認識していた。多大な機会や経営資源が、探索されず手も触れられないまま眠っていた。同社は企業文化を変革したいと考えたが、そのために何百万ドルも――数十万ドルでさえ――使う状況にはなかった。

 編み出された方法はシンプルで巧妙、かつ安価にできるものだった。他部門のメンバーやグループから組織横断的に真の価値を引き出せた人々を、経営幹部が評価して賞を与えるのだ。我々は、互いに対を成し、かつ補完しあう2つの賞を創設した。1つは「今月のどろぼう賞」だ。他の部門からアイデアやイノベーションを「盗み」、みずからの事業にうまく組み入れたチームや小規模グループに授与される。この栄誉は社内で大々的に発表され、ささやかな賞金が与えられる。もう1つは「盗まれた賞」だ。自部門のベスト・プラクティスやプロセスが、社内の他部門で採用された場合に授与される。どろぼう賞に比べると、賞金も発表もやや控えめである。

 2つの賞により、バランスの取れた「市場」ができあがった。その市場で社員たちは、盗めるアイデアを探すだけでなく、自部門のベスト・プラクティスのうち、どれが社内にもっと知られるべきかを考えた。つまりこのコンテストは、共有する価値のある知識(ナレッジ)に関して「需要」と「供給」の両方を刺激したのだ。

 効果は大きかった。公式なコンテストが、非公式な交流を多数生みだしたのだ。開始から100日間で、約200件の応募があった。ある財務グループは、事業部門が主要な業績指標をより簡単に計算できる、エクセルのマクロを広めて受賞した。また、ある人事グループは、オンラインの360度評価プロセスを別の人事グループから盗んで再活用した。1年目には、四半期ごとに賞が授与され、社内のブログやメール、社内イベントなどで大きく紹介された。2年目は年に2回行われた。3年目からは、年に1度の全社的なイベントにまとめられた。社内には300~400人のマネジャーやリーダーで構成されるネットワークができ、そこでは情報共有やベンチマーキングが当たり前に行われるようになったという。コンテストは組織の分厚い壁の内側で、新たなタイプの価値交換を焚きつけたのだ。

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