「取り調べ型」の問いかけが、
部下の意欲と創造性を殺す

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部下に明確な目標を示し、完全な自由裁量を与え、真の当事者意識を持たせる――言うは易く、実践は難しい。実現への近道は、部下を「取り調べる」という態度を改め、「気にかける」という意識を持つことであるという。


前回の記事で我々は、イノベーションを活かすマネジメントの要諦を示した。社員の意欲と創造性を左右する4つの要因(目標、評価、報酬、プレッシャー)を、バランスよく適用することである。その際に最も難しいのは、社員に明確で意義のある目標を与えると同時に、その達成において十分な自由裁量を与えることだろう。両方を同時に与えるのはたしかに簡単なことではないが、うまくやっている企業もある――時として、独創的な方法で。

 受賞歴を持つビデオゲーム開発会社のバルブ・ソフトウェアでは、社員が任務を遂行する際に、ほぼ完全な自主性が認められている。マネジャーが部下にプロジェクトを割り当てる、ということがないのだ。つまりプロジェクトは、参加希望者の人数に基づいて、自然に発展していく。新しいアイデアを考えついた社員は、積極的に他者に参加を呼びかける。このダーウィン主義にも似たモデルでは、自然淘汰のようなプロセスが生まれる。優れた(最高にクールな)プロジェクトは、多くの社員から魅力的であると見なされ、参加人数がすぐに増えるわけだ(英文の関連記事はこちら)。

 バルブでは、すべての社員が各々の仕事にきわめて有能であるという前提の下、みなが正しい判断を行い仕事に尽力するものと信頼されている。その結果、社員は明確な目標(なにしろ、プロジェクトの目標を設定するのは彼ら自身だ)と、高度の自主性、その両方を享受している。プロジェクトは「社員自身のもの」――社員みずからが選び、みずからの裁量で遂行するもの――であるため、彼らは仕事に意義を見出しやすい。これは職場での意欲(エンゲージメント)を高める重要な要因である。

 あなたの職場では、こうした現象の一部でも見られるだろうか。おそらくそうではないと、お察しする。プロジェクトの選択に完全な自由を与えるバルブのやり方は、ほとんどの組織では通用しない。理由の1つに、同社には250人しか社員がいないということがある。このような寛大なシステムが、より大規模な組織にもうまく適用できるとは思えない。2つ目の理由として、バルブはソフトウェア開発会社であるため、新製品の開発には大規模な設備投資を必要としない。製品開発に多額の準備費用がかかる企業にとって、バルブのやり方は経済的に成り立つものではない。

 それではバルブから何のヒントも得られないのかといえば、そうでもない。明確な目標と自主性のバランスを取るうえで、参考にできることがある。

 1つ目は、社員をインスパイアする企業ミッションを、経営トップが明確に示すこと。組織にとって最優先の目標は何か、それが組織と顧客にどう貢献するのかを説明するものだ。2つ目は、あらゆる階層のリーダーが、目標に関して部下とコミュニケーションを図り、各々に見合った形で目標を設定すること。これによって全社員が同じ目標を共有する。3つ目は、前線で働く人々を監督する現場のリーダーが、部下1人ひとりの行動が全社の目標にどう貢献するかを全員に理解させること。これは、職場におけるやりがいを引き出す行為そのものだ。

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