P&Gの上空を飛ぶ、不吉な「ブラック・スワン」

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2013年5月、業績が伸び悩むP&Gの会長兼CEOに、A・G・ラフリーが復帰した。エクセレント・カンパニーである同社を脅かし、ラフリーに挑戦を突きつけるものは何か。それは5つの変化の潮流であるという。本誌11月号(10月10日発売)特集「競争優位は持続するか」の関連記事、第9回。


 シンシナティにあるプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の本社の前に立ち、そのビルを見上げれば、上空に黒いものが見えるだろう。鳥が飛び回っているのだ。地元の人によれば、数年前から集まってくるようになったという。はっきりとは見えないし、実際のところ、誰も気にしてはいない。しかし、A・G・ラフリーがCEOに復帰したいま、従業員は全員外に出て空を注視すべきかもしれない。

 その鳥たちは、P&Gにとってブラック・スワンかもしれないからだ(注:ナシーム・ニコラス・タレブが唱えた「黒い白鳥」 から。誰も予想しなかった、インパクトのある事象のことを指す。グーグルの成功、9.11、サブプライム・ローン危機などもこれに相当するという)。同社にとっては1羽たりとも好ましいものではないだろう。群れをなして空を覆うようにでもなれば、一時は無敵であったこの企業の無事を神に祈ることになる。

 ブラック・スワンが危険な理由は2つある。第一に、彼らはP&Gのビジネスモデルを覆しかねない変化を象徴している。第二に、目下のところ、P&Gがその姿をはっきりと見ることは不可能だ。しかし地上に舞い降りれば、プロメテウスの肝臓をついばんだワシのように、P&Gを餌食にするだろう。あまり見たくはない。

 ラフリーや幹部には頭上を舞うブラック・スワンが見えていないことが、どうして私にわかるのか? いや、もちろん断言はできない。しかし、私がこれから読者に伝えようとしていることは、ラフリーらが頼っているリサーチからは浮かび上がってこないのは確かだ。これまでとは別の情報源を持たない限りブラック・スワンは見えない。

1.新しいブランディング
 大手ブランドは終焉を迎えようとしている。これは長い年月をかけて生じている、大きな変化だ。大手ブランドはこれまで、品質、一貫性、配慮の代名詞だった。P&Gで言えば、歯磨き粉の〈クレスト〉、洗濯用洗剤の〈タイド〉、カミソリの〈ジレット〉を私たちは信頼していた。これらに比べれば、小さなブランドは無節操で、手っ取り早く稼ごうとするペテン師のように見えた。

 しかし、形勢は逆転しつつある。私たちを驚かせ続ける優れた大手ブランドもあるにはあるが、多くは動きが遅く、ぎこちなく、顧客に鈍感であるように見える。一方、小さなブランドは、利口で俊敏で、私たちが手を伸ばせばそこにいる。かつては規模を活かした生産しかできなかった、あらゆる製品――ビール、ソフトドリンク、時計、カミソリ、衣類、化粧品、洗濯用洗剤――が、いまや小さなプレーヤーによってつくられている。ウェブサイトを店舗とし、フェデックスを流通チャネルとし、消費者がどこにいようとリーチできる。もちろん事業規模は小さい。しかし、どんなに大きなものでも、最初は小さいのだ。クリス・アンダーソンが『ロングテール―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略』(早川書房、2006年)で指摘したように、十分な数の小さなものが集まれば、同質の大きなものよりもさらに大きな、異質なものの集まりが出来上がる(アンダーソンはもっと上手に表現しているが)。

 P&Gは自社のビジネスモデルにしばられ、10億ドル規模のブランドに依存している。効率性は保証されているが、恐竜になりかねない。完璧主義が時には成功の妨げになるとしたら、大きすぎることもそうなのだ。

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