一時的競争優位を次々と繰り出す方法

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「持続する優位性を築ける企業は稀」であり、「一時的競争優位こそ新たな常識」である――リタ・ギュンター・マグレイスは本誌2013年11月号でこう述べる。このことを受け入れ実践し、成功している企業のひとつが、レンタルオフィス事業を運営するリージャスだ。同社の成功要因をマグレイスが紹介する。


 自社の競争優位が短命であっても、成功している企業がある。「一時的な競争優位」を巧みに活用している企業の成功要因を、私は明らかにしようと試みてきた。

 リージャス・グループはそうした企業の一例だ。同社はさまざまなサービスを提供しているが、レンタルオフィス事業で最もよく知られる。同社の経営陣は、現在の競争優位が長続きしないという現実を受け入れているように思われる。ひとたび競合に追いつかれるか、競争優位のピークを過ぎてしまえば、それ以上優位にこだわって時間をムダにすることはない。どうすれば、優位を失った事業から速やかに撤退でき、新しい機会の発見、獲得、活用を果敢に行えるのか。同社の成功から、それを学ぶことができる。成功の秘密はどこにあり、一時的優位の波を次々にとらえる秘訣は何なのだろうか。

 リージャスの創業は1989年。起業家として多彩な経験を持つイギリス人のマーク・ディクソンが始めた事業だ。彼の起業家としての出発点は、大学を中退した頃に始めた「ダイアル・ア・スナック」という食品デリバリー業だった。残念ながら幸先のいいスタートではなく、この事業は失敗に終わった。のちに彼はレポーターにこう語っている。「お客さんには気に入ってもらえたんです。だけど、誰も教えてくれなかったんです。マージンを取る必要があるということを」

 その後、バーテンダーや百科事典の販売といった不安定な職で生計を立てながら、あちこち移動して生活していた。やがて、貯めたお金で移動販売車を買うと、数年間ホットドックを売って回った。ホットドック用のおいしいバンズは入手しにくい、という事実にチャンスを見出した彼は、貯金の1万ポンドを元手にブレッド・ロール・カンパニーを始める。この製パン会社は、1988年に8万ポンドで売却された。

 次にディクソンは、ブリュッセルで「フラット・レンタル」(と彼が呼ぶ)事業を始めた。現地を訪れた時に、小さなカフェでアイデアが閃いたのだという。周りに座っているビジネスパーソンたちは、買い物客や学生や主婦らがくつろぐ傍らで、落ち着かない様子でメモを取り、仕事をしようとしている。オフィスから離れているからだった。当時は、仕事で外出した時に誰かと打ち合わせする場所は、地元のコーヒーショップしかなかった。こうして、ビジネスセンター(と彼らは呼ぶ)を必要に応じてレンタルする、というアイデアが誕生した。

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