ポーターVSバーニー論争のその後を考える
(後編)

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連載前半では、戦略論の進化を第1世代~第4世代に分けて解説していただきました。社会性・公共性と経済性の両方を目指すことは、これまでの戦略論では語られていません。これがどれだけ既存の戦略論にインパクトを与えるかが、戦略論の進化を左右するでしょう。後半では、いま戦略論の中で重要なキーワードとなっている共有価値について伺います。従来の経済性をゴールとする戦略論とこれからの理論との間には、どのような違いが生じてくるのでしょうか。


編集部(以下青字):CSVを戦略論としてどう捉えるかは、非常に興味深いです。単に経済性だけを追求しているモデルよりも、経済性と社会性双方を追求するほうがリターンが大きいことを証明しなければ、戦略論として成立しないのではないでしょうか。

岡田:おっしゃる通りです。社会性の追求と経済性の追求がトレードオフの関係ではなく、シナジーがあることを実証しなければなりません。私がこれまでに行った現地調査に基づいて、事例による説明を試みてみます。

 例えば、2006年にスタンフォード大学のビジネススクールを卒業した2名によって創業されたディーライトデザインという企業は、「2010年までに1000万人、15年までに5000万人、20年までに1億人へ明かりを届けること」をミッションとしています。安定した電力グリッドへのアクセスがない地球上16億の人々の大半は灯油(ケロシン)ランタンを使用していますが、これをすべてソーラーランタンに切り替えるという戦略的意図を持っているのです。

 同社は当初、デザイン、製造、流通、販売まですべて自社で行う垂直統合型によって全ての付加価値を自社で独占し、コスト削減効果を最大限に発揮する排他的ビジネスモデルを採り、インドではそれなりの成功を収めていました。そこで同社はタンザニアでも同じモデルで事業を始めたのです(第1回取材)。

 ところが、タンザニアではどうにも現地ディーラー網と直営店網を自前で構築する戦略が計画通りに進まない。結局同社は取材後、タンザニアでの自社販売から身を引いてケニアに拠点を移し、サブサハラ全域を対象とする卸業に徹したのです。タンザニアでの販売はどうしたのか。自前チャネルの代わりに、イギリスのNGO(ソーラーエイド。現地小学校の屋根にソーラー発電パネルを提供する慈善活動を既に行っていた)に販売活動を委ねたのです。その後の進展は大変興味深いものでした。2年後に現地を再度取材すると、自前チャネルの時には達成できなかった販売計画を上回る実績で進捗していたのです。

 一体何が起きていたのか。NGOの現地スタッフがソーラーパネル設置のために通常行っている小学校側との打ち合わせに際し、販売を委託されたソーラーランタンも持参したところ、小学校のスタッフから「子供が夜勉強するのにすごく役立ちそうだ」と好評を得、とんとん拍子で教師たちによる販売が始まったわけです。教師には販売数(20個)に応じてランタン1個を無料で贈るインセンティブを用意しました。これが効いたのだそうです。対象となる小学校区は次々と広がっていました。(第2回取材)

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