森下仁丹・駒村純一社長に聞く
「伝統に胡坐はかかない (後編)」

DHBRインタビュー

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前回のインタビューで、森下仁丹代表取締役社長の駒村純一氏には事業が困難に陥った際の組織改革や、伝統があるが故の困難について語っていただいた。後半では、いま同社が取り組んでいる最先端のカプセル受託事業を含め、お話を伺った。


――現在好調のカプセル受託事業に注力し始めたのは、駒村さんが社長に就任されてからですね。その理由を教えてください。

 私が就任する以前もカプセル自体はありました。現在ヘルスケア事業で主力のビフィズス菌をカプセルに閉じ込め、生きたまま腸まで届けるビフィーナは今年で発売20周年を迎えます。しかし、この技術を医薬品と食品にしか使っていなかった。

 私は森下仁丹の生え抜きではなく、三菱商事から来た人間です。まだまだ他の用途があるのではないかと考えたことがきっかけでした。このカプセルはビフィズス菌も包めることから、他の微生物を包むことも可能だと考えました。特に産業用にシフトできれば、非常に強力な事業へ成長すると感じたのです。

――たとえばどのような事例がありますか。

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駒村 純一氏

 まずは水の浄化です。カプセルの中にバクテリアを入れることで、そのバクテリアが有機物を分解します。他にも、工場から出てくる排水の中からレアメタルを取り出す用途でも研究が進んでいます。

 レアメタルを排水の中から取り出して、還元するバクテリアを研究している先生がいらっしゃいました。先方もバクテリアを固定化する方法を模索していたため、それではバクテリアをカプセルという籠にくるんでみないかと、話を持っていったのです。既存の方法より、いかにコストを下げられるか、排水の種類にどう対応するかを、いま研究しています。

 また、シロアリ駆除にもこのカプセルは利用されています。カプセル表面にフェロモンを付けると、シロアリが卵と間違えて巣に持って帰ります。シロアリは卵を乾燥から守るためになめるのですが、その習性を活かしました。卵と間違ってカプセルをなめると、それが破れる仕組みになっています。薬を広く散布することなく巣を狙い撃ちして駆除できます。

――カプセルを採用している企業はどのくらいあるのでしょうか。

 延べ150ヶ国1000種類くらいにカプセルを提供しています。実はこのカプセル事業は現在、国内よりも海外の企業からの引きが強いです。食品や医薬品以外のジャンルの展示会にも出かけ、いっそう売り込みをかけています。

 高齢化がすすみ日本は内需が先細ることは間違いありません。シームレスカプセルはオンリーワンの技術なので、将来的にはこの技術でグローバルスタンダードを目指したいです。

――カプセル事業は欧米が中心ですね。アジア市場に対しては、どのような戦略をお持ちですか。

 欧米では仁丹ブランドが通用しないので、ブランド名を活かさず技術を前面に売り込んでいます。しかし、アジアでは仁丹ブランドに対するあこがれが残っています。

 仁丹は発売から3年目の1907年に輸出部を新設して、インドや東南アジア、南米、アフリカと世界中に販路を拡大しました。1921年度には日本の売薬輸出額の6割を占め、世界有数の家庭薬として受け入れられていた歴史があります。

 そのため、アジアではカプセル事業ではなく仁丹の名前がついた製品、例えばビフィーナや仁丹を香港・タイなど各地へ輸出しています。親日の地域も多いですし、日本製品に対するリスペクトもあります。現在の売上げは微々たるものですが、アジア諸国の成長に期待し、積極的に市場に食い込みたいと思います。

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