規模の経済は、陳腐化の一途をたどっている

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本誌2013年11月号(10月10日発売)の特集は、「競争優位は持続するか」。HBR.ORGの関連記事の第5回は、「規模の経済」の陳腐化について。1985年にポーターは、ITが競争やバリューチェンに及ぼす影響について考察した。今日この影響は拡大し、規模の優位性を劣化させている。


 イノベーションの競争では、ほぼ休む時間はない。あなたの会社が、次に来るもの、最高のものを見つけるや否や、業界の誰もがそれを真似しようと動き始める。良い時は競合がその秘伝のソースを解明するのには何年もかかるが、最悪の場合、何カ月も経たないうちに、利益を生む差別化がコモディティ同士の競争になり下がる。競争の嵐を避けるには、「規模の経済」が最後に残された砦だった。言い換えると、規模による優位性は、一部の企業には少しだけ安全な避難場所となってきた。

 多くの企業は、自社の製品やサービスにおける次なる成功のサイクルを模索し続けなければならないが、ごく一部の企業は、先見の明ではなく規模の活用によって利益を追求することができた。公益事業会社が好例だ。電力会社がひとたび電線を張り、送電網と各家庭をつないでしまえば、新規参入業者が現れる可能性は低い。ウォルマートやターゲットなどの大規模小売業者も、仕入れコストを低く抑え、価格に競争力を持たせるために規模を活用してきた。クラフトやペプシなどの加工食品メーカーは、規模を活かして市場に素早く効率的に進出している。全体として見れば、規模は世界中の大企業に戦略面で大きな恩恵をもたらしてきた。起業家によるイノベーションの脅威から、多くの企業を守ってきたのだ。しかし残念ながら、規模により獲得できる優位性は、長くは続きそうにない。

 このような考え方に、驚く人もいるかもしない。なにしろ、規模のメリットについて理解され始めたのは、時代をさかのぼって1776年、アダム・スミスが『国富論』を出版した時である。公正を期して言うと、私は規模によるメリットが消えてしまったと言っているのではない。そうではなく、規模によるメリットが陳腐化したと考えている。今日の世界では、規模を活用するために、みずから規模を獲得する必要はないのである。

 この意味を理解するために、大企業がどのようにして、情報システムを通じて規模の優位性を獲得してきたかを考えてみよう。まずはマイケル・ポーターのバリューチェーンを確認しておきたい。

 過去30年間、企業の経営陣は、国外移転やアウトソーシング、オープンイノベーションなどの手法を取り入れてきた。こうした手法は企業をモジュール化する。もっと簡単に言うと、これまでとても複雑で統合的だったバリューチェーンが、ずっと小型で専門化されたバリューチェーンの集まりのようになっていくのだ。複雑な製造や社内の物流インフラに頼るのではなく、専門化すれば効率が高まると経営陣は気づいたのである。しかし、モジュール化を進めたにもかかわらず、経営陣は小型化されたバリューチェーンの集まりをまとめるのに、1つのサポートシステムに依存していた。情報システムだ。世界で最も大規模な企業だけが、複雑な情報システムを築き、供給業者と配送業者を統合することで、規模と専門化の両方のメリットを享受することができた。

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