ポーターVSバーニー論争のその後を考える
(前編)

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2001年5月号DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー誌に『ポーターVSバーニー論争の構図』と題した論文が掲載され、戦略論におけるポジショニング派とRBV(リソース・ベースト・ビュー)の違いが一般化した。その執筆者である慶應義塾大学大学院の岡田正大教授に、既存の戦略論は今なお有効なのか、そしてポーターVSバーニー論争後の戦略論がどのように移り変わってきたのか伺った。


編集部(以下青字):既存の戦略論で、成功事例として取り上げられていた日本企業の多くが、近年勢いに陰りを見せています。

岡田:独自技術に強みを持つ日本企業の一部が失速した事実は、既存の戦略論、特に個別企業の異質性を前提とする戦略理論群(後述の第2世代)で説明可能かどうか。その問いに対する返事はイエスです。持続的競争優位の源泉として個別企業特殊な経営資源の属性に着目するRBV(バーニー、ワーナーフェルト、ルメルト等)、およびRBVを補完するレナード・バートンの言うコア・リジディティという概念(既存のコアコンピタンス、全社レベルの競争優位の源泉、を大事に守り続けてしまうことの弊害)、そしてクリステンセンの持続的イノベーション・破壊的イノベーションの概念を用いれば、かつて技術力を武器に好調を謳歌していた日本企業の凋落は説明がつきます。

 つまりそれらの日本企業はこれまで有効に機能した自社のコアコンピタンスを、コア・リジディティゆえに守る姿勢に入って持続的イノベーターの罠に陥り、破壊的イノベーターの台頭によってきわめて短期間に大幅な売上喪失を喫した、ということになります。

では、ポーターVSバーニー論争の当時と比べ、戦略論にはどのような変化がありましたか。

 少し歴史的な観点からお話しすると、戦略論はむしろ既存理論(第1世代、第2世代)自体の「修正」というよりも、私の分類による第3世代、第4世代の「積み上げ」という形で進化していると考えます。

 第1世代はポーターに代表されるように、利益の上がりやすい構造を持つ場(業界)を探索・選択し、そこに経営資源を投下する。つまり分析レベルは「業界(industry)」でした。続く第2世代はバーニーに代表されるRBVのように、競争優位の源泉を個別企業の特殊性・異質性(firm heterogeneity)に求めるものです。いかに同業他社に存在しない、自社特有の(VRIO(注)を満たす)経営資源を保有するかを重視します。分析単位は第1世代の「業界」ではなく、「個別企業」単位の経営資源が中心となります。日本で話題にされたポーター・バーニー論争は第1世代と第2世代の説明力(個別企業間の経済的パフォーマンスの違いをどれだけ説明できるか)をめぐる議論だったわけです。しかしその論争にはすでに一定の結論が出ています。

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