戦略論で観る、アップルの命運

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本誌2013年11月号(10月10日発売)の特集は「競争優位は持続するか」。これまで競争優位は戦略思想家たちによってどう論じられてきたのか。代表的な理論を、アップルの歴史を通して改めて振り返ってみよう。そこから、今後のアップルの命運が見えてくるかもしれない。


 2001年11月のiPod発売以来、アップルの快進撃はほぼ途切れることなく11年も続いている。だが、いずれは王座を降りる日が来るだろう。ビジネスの世界とはそういうものだ。問題は、それがいつ、どのようにして起こるのか、である。

「いつ」については、いまがその時かもしれない、というのが最近のムードである(注:本記事執筆時の2013年1月。複数のメディアがアップルの株価推移や財務状況を悲観的に受けとめた)。「どのように」については、さまざまな意見がある。

 アップルが頭打ちなのかどうか、私は確信を持てない。しかし、ひとつはっきり言えることがある。どのようにアップルが衰退するか(または発展し続けるか)は、戦略次第であるということだ。というのも、戦略こそがアップルを成功に導いてきたからである。

 なぜそう言えるのか。マイケル・ポーターによれば、戦略とはすなわち選択であるからだ。そして困難な選択は、アップルの成功に大きく寄与してきた。スティーブ・ジョブズによる同社の復興は、製品ラインをごく少数に絞るという決断とともに始まった。そして近年の大きな成功は、ジョブズとアップルのデザイナーが下した(機能などの)「省略」という決断によってもたらされた、と言っても過言ではない。ポーター曰く、「戦略においては、何をすべきかについての選択と同じように、何をしないかについての選択が重要だ」。ティム・クックや幹部がこの原則を守れるなら、アップルは競争上の優位性を維持できるだろう。

 あるいは戦略とは、ブルー・オーシャン――企業が定義した時に初めて出現する市場――を探し出すことなのかもしれない。これは、チャン・キムとレネ・モボルニュが述べた成功への道だ。たしかにアップルはそれを目指してきたように見える。iPodとiTunes、iPhone、そしてiPad――同社は顧客がまったく新しいと感じるもの、既存の製品にはできない方法で問題を解決するような製品を、繰り返し提供してきた。そして現在、特にiPhoneについて、競争の海はますます混み合ってきている。チャンとモボルニュによれば、ブルー・オーシャン戦略とは、何十年も続くブランド価値を生み出せるほどに強力なものである。その海を探り当てたアップルは依然として優位性を維持している。とはいえ、本当にトップに留まり続けるためには、もっと多くのブルー・オーシャンを探し出し、征服する必要がある。それは口で言うほど簡単なことではない。

 また、アップルが参入している変化の激しい分野では、破壊的イノベーションを続けることが成功への真のカギかもしれない――自社の製品でさえ破壊するようなものを、市場に送り込むことだ。これは、クレイトン・クリステンセンの有名な戦略論(『イノベーションのジレンマ』)であり、アップルの物語にはたしかにその要素が存在する。

 実は、過去11年におけるアップルの3製品(iPod、iPhone、iPad)の大成功は、クリステンセンが唱えた古典的な「ローエンド型破壊モデル」には、本当の意味ではどれも適合しない。クリステンセン自身、2007年には、iPhoneは「真に破壊的なものではない」し、成功しないだろうと述べていたほどだ。しかし、みずからを破壊しようとする持続的な意志こそが、アップルの今後の成功を左右する、という主張は妥当に思われる。iPhoneはiPodの売り上げの一部を奪い、iPadはiMacを邪魔している。それをアップルは気にかけていないようだ。かたやマイクロソフトは、2010年にタブレット〈クーリエ〉の開発を中止した。WindowsおよびOfficeとの互換性がなく、大きな収入源であるそれらの独占ソフトが破壊されるのを恐れたからだ。

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