リーダーシップの共有が組織と人を強くする

権限委譲は組織にとって重要な課題だが、コーチングの大家ゴールドスミスは、これを発展させた「シェアード・リーダーシップ」(共有型リーダーシップ)という概念を紹介する。1人ひとりをリーダーとすることで、すべての人材の能力を最大化するという方法だ。


 グローバル市場の拡大、業界再編、相次ぐ組織の合併――。こうした動きが活発化するなかで、これまで以上に求められているのが、ダイナミックな柔軟性、そして幅広い知識ベースとノウハウである。この複雑なニーズに応えうるソリューションの1つとして検証されているものがある。最も優れた能力を結集させる「シェアード・リーダーシップ」(共有型リーダーシップ)である。

 シェアード・リーダーシップとは何か。その目的は、組織内のすべての人材の能力を最大限に引き出すことだ。そのために各人に権限を与え、それぞれの専門分野でリーダーとしての役割を担う機会を提供する。市場が複雑化しますます多様なリーダーシップが求められるなかで、1人のリーダーでは対応しきれないというケースが増えているのだ。

 リーダーシップを共有するのは容易ではないが、それはたしかに可能であり、大いに成功している例も多い。たとえば、ウェブデザイン用のユーザーインターフェースを開発するある企業では、CEOの役割は多岐にわたり、1人では対応しきれなかった。そこで、CEOの職を2つに分け、互いに補完的な能力を持つ2人のリーダーが、同等の地位と責任を持って分担することにした。その後2人は、研究開発、アーキテクチャーとデザイン、販売の各部門を統率するエキスパートを採用し、チームを再編した。

 シェアード・リーダーシップを導入することで、2人のCEOはそれぞれが最も得意とする分野に注力し、チームリーダーを採用する機会を得た。これにより、階層型ではなくフラット化された、バランスのとれた優良企業をつくることができた。組織のフラット化は、権力、権限、意思決定を水平方向により広く、垂直方向により深く分散させ、1人ひとりに特定分野で優れた能力を発揮する機会を与えるものである。他により深い専門知識を持つ人がいれば、その人に権限を委ねる――これを実践するのは、リーダーにとって必ずしも容易ではない。

 ここで、リーダーシップを共有して人材の能力を最大限に引き出すためのアドバイスをいくつか紹介しよう

・適任者に権限を与えることで、その人の能力を強化する。
・意思決定の権限の範囲を明確する。
・従業員が任務に際し、自由にイニシアチブをとれるような雰囲気を醸成する。
・適任者に任務とリソースに関する自由裁量を与え、ここに挙げた手法を活用するよう奨励する。
・権限を与えた人たちの決定を尊重し、後でとやかく言わない。
・自分のことをマネジャーではなく、リソースの一部と考える。
・適切なフォローアップ会議を実施して進捗状況を確認し、必要に応じて是正策を講じる。

 自分より顧客に近い場所にいる人に、より強い権限と大きな責任を与えれば、時間の余裕が持てるはずである。そうすれば、プロジェクトの監督に費やす時間を減らすことができ、自分自身の努力よりも、従業員が成果を上げたという事実に対して達成感を得られるようになる。また、従業員がパートナーとしての意識を持ち、より積極的に仕事に取り組むようになればもっと望ましい。それは最終的に、組織、チーム、従業員がより大きな成功を収める土台となるだろう。


HBR.ORG原文:Sharing Leadership to Maximize Talent May 26, 2010

 

マーシャル・ゴールドスミス(Marshall Goldsmith)
エグゼクティブ・コーチングの世界的第一人者
ジャック・ウェルチを始め多くの名だたる経営者を指導してきた。代表作に『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(日本経済新聞出版社)などがある。

 

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