【名著拝見】『企業成長の理論』第7回
長期的な利益、長期的な成長

「第2章 理論における企業」(後半)

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本誌2013年11月号(10月10日発売)の特集テーマ「競争優位は持続するか」に合わせ、MBA必読の古典的名著『企業成長の理論[第3版]』の抜粋を紹介する連載も、このたび第2章「理論における企業」後半を紹介し、最終回とする。企業とは何か、成長とは何か、本質的な問いを投げかける本書がいまなお読み継がれる理由を感じていただければ幸いである。

 

事業会社と投資会社

 議論をより明確にするために、事業を営む企業と金融的な投資会社との間にあると広く考えられている差異を考察しよう。一方は生産を組織し、他方は金融上の手段を握っている。しかし、事業会社の大規模化が進み、その業務運営が、各部門により大きな自立性を認め、権限のラインの希薄化をともないながら次第に分権化されていくと、この企業はだんだんと金融持株会社の特徴をもつようになり、事業会社としての特徴を失い、最終的に、実質的には投資会社と区別できないものとなりはしないだろうか。そして、このようなことがまさに起きた場合、事業会社の成長を支配する原則は、その組織の本質が金融的な企業に変質したときにも同じように適用できると仮定してもよいのだろうか。

 私はこのように仮定できるとは思わない。逆に、現実の生産や流通組織を展開している企業の成長の分析に適した手法は、純粋に金融的な組織の成長の分析に必要な手法とは大きく異なるだろう。それゆえ、われわれが事業会社をさまざまな事業活動を調整する管理上の枠組みという観点から定義するとすれば、そのような組織としての企業の成長だけを問題にできることになる。われわれの目的に照らせば、企業の境界を決めるべきものは「調整の範囲」、すなわち「権威あるコミュニケーション」の及ぶ範囲であり、したがって、1つの事業会社としての規模に限界をもたらすものは、事業会社の定義を満たすに足る管理的調整を維持する企業の能力なのである。しかしながら、かりにこの限界を超えたとしても、その組織が「非効率」になるとみなすことはできない。それは、異なるタイプの分析を適用すべき、異なるタイプの組織になっただけのことかもしれない。

「権威あるコミュニケーション」とは、一方では各職位の階層を通じて実際に詳細な指示が伝達されること、もう一方では、人々の間に、認識され受容された方針や目標および過去のある時点で確立された管理手続きが存在していることを要件としている。いろいろな種類の「権威あるコミュニケーション」の「交錯」、とりわけ企業の外部から生じる交錯によって、企業の境界に関するこの基準の適用可能性が弱まるかどうかを考えると、問題は難しくなってくる。これは基本的には、「管理的調整の範囲」は実際にいかにして発見できるのか、別の言葉でいえば、われわれはいかにしてある時点でのある企業の規模を決めるのかという問題なのである。

 おそらく法人形態が支配的になる以前の時代には、1つの企業はきちんと識別できる存在であった。しかし、現代のビジネスの世界では、支配の及ぶ範囲が広くかつ捉えづらいため、どこまでをある企業の内部に含めるべきかを決めることがより難しくなっている。法人化されていない個人企業、パートナーシップ、および子会社をもたない小規模な企業は一般に問題はないが、多くの子会社をもち、それらに対してある程度の支配力を行使している大企業の場合は、その範囲の捉え方が難しい。

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