「江南スタイル」が教えてくれる
新しいマーケティングの原則

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本誌2013年10月号(9月10日発売)の特集は「顧客を読むマーケティング」。これに合わせ、HBR.ORGから関連記事10編をお届けする。第3回は、昨年から今年にかけて世界を席巻した「江南(カンナム)スタイル」の成功要因について。この奇抜な歌と踊りが広く支持を得た理由を、延世大学校のダエ教授が解説する。


 昨今、どこにいても「江南スタイル」が耳目に飛び込んでくる。韓国で生まれ、瞬く間に大流行となったダンスだ。ラッパーのサイが歌い踊るこの曲は、有名テレビ番組の「トゥデイ」や「エレンの部屋」、「サタデー・ナイト・ライブ」などをはじめあちこちで紹介され、iTunesのチャートでも1位を獲得した。


 覚えやすい曲調と奇妙なダンスを別にすると、「江南スタイル」に対するこの世界の反応をどう説明したらいいのだろうか。歌詞はほとんど韓国語であるというのに。そしてより重要なことだが、企業はここから何を学べ、自社のブランドや製品にどう応用できるだろうか。

 HBRブログで話題を呼んだ記事「マーケティングは死んだ」のなかでビル・リーは、メーカーと消費者を結ぶ従来型のマーケティング・モデルをどのように変えるべきかを説いた。リーの主張は「江南スタイル」の成功によく表れている。メディアの利用やコンテンツ開発、発信において、ソーシャルネットワーク中心の戦略を忠実に実行した形跡が見られるのだ。

 まず、この曲は国際的な著作権をあえて有しておらず、誰もがオンラインでパロディをつくれるようにしてある。「ライフガード・スタイル」や「オレゴン・ダック・スタイル」など、自身の「○○スタイル」だ。オリジナルの「江南スタイル」は世界で2億回以上視聴されたが(2013年9月現在の再生回数は17億超)、パロディも合わせた再生回数は、その何倍にもなると想像される。

 もう1つのソーシャルネットワーク戦術は、いまでは有名な「見えない馬ダンス」の振り付けに、クラウドソーシングが用いられたことだ。サイは身内のチームに頼るのではなく、韓国のダンス・コミュニティ全体から提案を集めて統合し、大人気となった動きをつくりだした。

 サイは大まかに言えば「Kポップ」のカテゴリーに入るが、そこに属する他のアーティストのような美形のタイプからは程遠い。どちらかといえば、彼の容姿や立ち居振る舞いは、ごく普通の人に近い。実際「江南スタイル」は、ソウルの江南区に象徴されるような高級で一流の人生を、一般人が夢想する様子を揶揄したものだ。反物質主義的なテーマは、世界的な不況というタイミングと相まって、この曲の魅力を広める力となった。

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