イノベーションを阻む、意図せぬ「拘束衣」

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健全な企業でも、意図せずにみずからイノベーションを阻んでいることがあるという。アンソニーはこれを拘束衣になぞらえ、5つの制約を紹介する。


 拘束衣というものがある。18世紀初期にフランスで、精神疾患の患者が自分の体を傷つけないよう考案されたものだ。拘束衣はその役目を十分に果たすが、それを着用した人は他の多くの能力をも失う。とくに、タイピングをしたり、絵を描いたり、何かを操作したりといったクリエイティブなことができなくなる。

 非常に健全な企業でも、意図せずに拘束衣を身に付けてしまうことがある。いきおい、大きな可能性を秘める新たな成長機会を創造しにくくなる。知らず知らずのうちに、どのようにイノベーションを制約してしまうのかを見てみよう。

1.現在の能力に縛られる
 何かができない理由として企業がよく挙げるのは、それが自社の中核的な能力を超えているということだ。この考え方の愚かさを理解するには、マーク・ザッカーバーグが寮の部屋でこう言っているのを想像してみるとよい。「フェイスブックはつくれないよ。僕の中核的な能力を超えているから」。ハーバード・ビジネススクール教授のハワード・スティーブンソンは起業家精神をこう定義する。「現在コントロールしている資源にとらわれず、機会を追求すること」

2.カニバリゼーションへの恐怖で動けない
 多くの企業が、まるで全能であるかのように行動することがある。つまり、顧客の行動を決めるのは自社の決定であり、自社の決定だけが顧客を動かすのだと。カニバリゼーション(市場の食い合い)を防げたら素晴らしいが、それは実際には不可能だ。

 事業上考慮すべきは、企業がカニバリゼーションにみずから加わるか否かである。覚えておいてほしいのは、真に革新的なアイデアは市場を拡大する場合が多いということだ。アップルのiPadはたしかに、同社で利益を出していたノートパソコンやラップトップの売上げを多少犠牲にしたかもしれない。しかし、カテゴリー全体が伸びたことにより、それは明らかに報われたのである。

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