【書籍拝見】『ビジネスで一番、大切なこと』③
激しく競うほど、互いの違いは小さくなる

ヤンミ・ムン教授の「消費者のこころを学ぶ授業」

3

 ビジネスも同じだ。雑魚の集団から抜け出し、消費者との純粋な絆を生み出せる傑出した企業は、残念なほど少ない。しかし彼らは、私たちがとらわれているビジネスの原則なるものの限界を教えてくれる。本書の第1部が批判として読めるのに対し、第2部は異端児やその手法に対する賞賛として読めるだろう。

 1匹狼を称える場合、当然ながら落とし穴がある。ファッションやメディア同様、学問の世界にも流行があり、現状を打破した人を主人公にするアイデアは月並みになっている。だからこそ、異端児をただ称えるのではなく、私たちがヒントを得られるような形でその業績を分析し、解明したい。それが第2部の目的である。

               * * *

 本書はハウツー本ではない。現代のビジネスパーソンに必要なのは、斬新な指針ではなく、斬新な考え方だ。したがって第3部では、差別化についての新しい考え方を紹介し、対話の糸口を示そうとしている。  厄介なのは、すでに多くのビジネス書が、「ルールを破れ」「過激であれ」「古きを捨て、新しきを取り入れよ」と述べていることだ。聞き飽きた言葉に、どう重みを持たせればよいのか。

 最寄りの書店の旅行コーナーをのぞいたなら、旅行関係の本にも2種類あるのに気づくだろう。圧倒的に多いのは、旅行ガイドの類のはずだ。『カリビアン2010』『お馬鹿さんのイタリアガイド』『1日85ドルで過ごすヨーロッパ』。いわゆるマニュアル本で、どこで何をすればいいかという的確なアドバイスが示されている。

 一方、『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』(中央公論社)、ジョン・マクフィーの『アラスカ原野行』(平河出版社)、ポール・セローのTo the Ends of the Earth(地の果てまで)といった紀行の類には、具体的なアドバイスはほとんどない。この種の本から得られるものは、読後にあるからだ。あなたがどこかを訪れるたびに、大事なのは今、目にしているものではなく、あなたがそれをどのように見ようとしているかだということを、そっと思い出させてくれる。

 プロセスが結果を左右する。これが第3部の主張である。人々が競争にどうかかわるかによって、ビジネス界の調和や収斂が加速される。だからこそ、私たちには新たな習慣が必要だ。競争を行う上での新しい原則や知恵を身につけなくてはならない。競争のための新たな文化を築くことができれば、想像もしなかった結果が生まれ得る。

 では、消費の世界のそぞろ歩きに出かけよう。私は途中で少し寄り道するかもしれないし、ときには専門用語も口走るだろう。けれども覚えておいてほしい。本書のような読み物の価値は、読み手のその後に何をもたらすかによって測られる。私流に言えば、問題はページの上に何が書かれていたかではない。読みながら、あなたが何を考えるか、なのだ。

(第4回に続く)

 

DIFFERENT by Youngme Moon
Copyright (C) 2010 by Youngme Moon
Japanese translation rights arranged with The Sagalyn Literary Agency through Japan UNI Agency, Inc., Tokyo

 

【書籍のご案内】

『ビジネスで一番、大切なこと――消費者のこころを学ぶ授業』

彼女の授業は なぜ、それほど熱く支持されるのか? 「競争戦略論」マイケル・ポーター、「イノベーションのジレンマ」クリステンセンと並び、ハーバード・ビジネススクールで絶大な人気を誇る、いま、最も注目される女性経営学者、初の著書!
激しい差別化競争、渾身の企業努力が、結果として市場の同質化を招き、消費者の無関心を引き起こしてしまう……成熟化時代のマーケティングはどうあるべきかを示唆する1冊。
46判並製、200ページ、定価(本体1500円+税)

ご購入はこちら
Amazon.co.jp] [紀伊國屋書店BookWeb] [楽天ブックス

無料プレゼント中! ポーター/ドラッカー/クリステンセン 厳選論文PDF
Special Topics PR
書籍」の最新記事 » Backnumber
今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー
最新号のご案内
定期購読
論文セレクション
  • facebook
  • Twitter
  • RSS
DHBR Access Ranking