クラウドソーシングが拓く、新しい広告の姿

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本誌2013年9月号(8月10日発売)の特集は「集合知を活かす技術」。HBR.ORGの関連記事の第5回は、広告代理店V&Sのクラウド活用について。ブランドのファンやコミュニティを巻き込み広告を展開する、具体的な手法の一部を紹介する。


 新聞業界と同じように、従来型の広告代理店も時代遅れになろうとしている。インターネットにつながりさえすれば、誰もが広告代理店やメディア会社、制作会社になることができる。デジタル化が可能にするオープンなシステムの力を活用するためには、従来型の広告会社は、文化やプロセス、組織構造、人材活用、リソース、ビジネスモデルや収益モデルまでも変える必要がある。軌道修正にはまだ間に合うが、ただちに始めなくてはならない。

 オープン・イノベーション、クラウドソーシング、共創――これらは過去10年の間に、ビジネスの世界に抜本的な民主化をもたらした。その結果、広告会社のあり方も変わりつつある。ジョン・ウィンザー(筆者の1人)がCEOを務めるビクターズ・アンド・スポイルズ(V&S)の事例を紹介しよう。

 ハーレーダビッドソンが長年付き合った代理店との関係を解消した時、V&Sは後釜を狙っていたが、お決まりの売り込みはしなかった。クリエイティブ・ブリーフ(広告意図を示す概要)を作成し、7200人の独創的で戦略に長けた人たち――フリーランサーや他の代理店のスタッフ、ブランドや広告のファンなどで、オープン参加を歓迎する人たち――に公開したのだ。すると600件ものアイデアが殺到した。

 ジョンはハーレーの最高マーケティング責任者(CMO)であるマーク・ハンス・リッヒャーに、このV&Sの試みについてツイートし、リッヒャーから「進めてほしい」との返信を得た。V&Sは最終的に65件のアイデアをリッヒャーに提示し、契約が成立した。“No Cages”(檻から出よう)というコピーは、ケンタッキー州レキシントン在住のベスパのディーラー、ウィット・ヒラーが考案したもので、2年後のいまもハーレーのCMで使われている。

 V&Sはクラウドソーシングの取り組みの一環として、〈ファン・マシーン〉というアプリを開発した。これはブランドがソーシャルメディアで展開するプラットフォームを、バーチャルな創造の場に変えるものだ。ここではブランドのファンが、広告の中心的な役割を担う。ハーレーは自社のファンの協力を得て〈ファン・マシーン〉による新たなキャンペーンを展開した。

 このアプリは、発想を生み出すエンジンであると同時に、ソーシャルメディアのプラットフォームであり、広告代理店でもある。ハーレーはフェイスブック上で〈ファン・マシーン〉を利用して広告アイデアをファンから公募し、提出プロセスや賞の概要、締切りなどを説明し、応募作を公開した。ファンは次々とアイデアを応募し、互いに順位をつけ、自分のエントリーを友人に拡散した。一方、V&Sは応募を追跡・管理し、ファンからのデータを集め、ハーレーに提供した。

 合計222件のアイデアが集まり、8193人から票が投じられ、ワシントン州タックウィラのハーレー・ファンであるハロルド・チェイスのコンセプトが1位を獲得した。ハーレーもファンたちもこのアイデアを気に入り、V&Sはこれをもとに広告を制作した。ファンによって、ファンのために考案されたこの「ハーレーらしさ」というキャンペーンはツイッターを通して展開が始まった。

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