リストラが残された社員に与えるダメージ

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人員削減が進行している企業の社員は、実際にどんな経験をしているのか。アマビールとクレイマーが行った日誌分析からは、その生々しい胸中が伝わってくる。


 2011年10月24日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙で、衝撃的な見出しを目にした。「スリム化を進める企業、さらなるリストラへ」と題したこの記事の冒頭は次のように始まる。「次の四半期も堅調な企業利益が見込まれているにもかかわらず、多くの大企業から不吉な前兆を見て取れる。それは、リストラだ」

 2012年の収益成長率の減速見込みに動揺した大企業のなかには、すでに縮小を断行しているにもかかわらず、さらなる雇用削減計画を進めているところもある。これは反射的に、嫌な予感を抱かせる。記事によれば、経済の脆弱性に対する恐れがさらなる脆弱性を生むことを、アナリストたちは懸念している。「リストラの増加を、回復の兆しであるとするような風潮が生まれている」というのだ。この懸念には我々も同意するが、リストラが企業自身に及ぼす2つの危険性についても指摘しておきたい。

 第1の危険性として、人員削減は企業の期待に反して、その業績をむしろ悪化させることが少なくない。コロラド大学教授のウェイン・カシオが長年にわたって取り組んでいる研究によれば、リストラは、企業幹部や取締役会が求め、ウォール街が称賛するような万能の解決策とはほど遠いことを示す証拠が明らかとなっている。

 カシオは著書Responsible Restructuring(2002年、未訳)のなかで、従業員のレイオフに対する有益な代替策を述べている。すべての経営者と役員は、彼の研究を学ぶべきだ。カシオのアドバイスは2つのポイントに要約できる。まず、可能な限り人員削減を避けること。しかし余剰人員の削減がどうしても避けられない場合には、ただ解雇するだけではなく、いくつかの戦略をふまえ慎重に進めること(英文の詳細はこちら)。

 第2の危険性として、人員削減は職場環境に著しく負の影響を与え、残された社員のパフォーマンスやモチベーションを低下させる。これはカシオが言う、ミクロの影響がマクロの結果をもたらすというプロセスだ。我々の研究では、この原理が組織の第一線で活躍する社員(最も創造性を必要とする任務を担う人々)に与える影響が明らかとなっている。

 数年前に、ある大手ハイテク企業の研究開発部門を対象に調査を行ったところ、人員削減が行われた時期には、創造性を最も左右する要因が著しく悪化した。仕事へのやりがい、明確な目標、その目標を達成するための自由裁量、情報の共有、同僚・上司からの支援、などである。創造性のみならず、生産性も実際に鈍化していた。人員削減が終わって数カ月が経過すると、職場環境は元の状態までほぼ回復した。生産性は人員削減前に近いレベルにまで持ち直したが、創造性は大きく損なわれたままであった。

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