給料は、企業から社員へのメッセージとなる

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社員のパフォーマンスを最も高める要因が「進捗」であるならば、「報酬」は重要ではないだろう――これは誤った認識であると筆者らは言う。進捗を左右する「インナー・ワーク・ライフ」と報酬は相関するのだ。


 企業のリーダーは、最も価値のある資源は社員である、と臆することなく表明する。だが多くの人にとって、これは口先だけの決まり文句に聞こえる。ギャラップとヘルスウェイズは2008年1月から、最低1000人以上の米国成人を対象に「幸福度指数」を測定する世論調査を実施している。2011年の結果では、米国民が過去のどの年よりも、雇用に不安を感じていることが明らかになっている。なぜだろうか。我々は、約12000の業務日誌を分析し、また調査対象となった人々と対話を重ねることで、少なくとも1つの原因を突きとめた。すなわちマネジャーは、社員を評価しているということを彼らにどう伝えればよいのかわかっていないのだ。実際、マネジャーは無意識に逆のことをしてしまっている。

 これらの業務日誌は、我々が呼ぶところの「進捗の法則」を明らかにした。人々が仕事に満足して、心からやる気を感じるために最も必要なことは、「有意義な仕事で進捗を得る」ことである。この研究結果をThe Progress Principle(未訳。関連論文「進捗の法則」は本誌2012年2月号)として出版したところ、その実用的な意味合いについて多くの質問を受けた。最も重要な(そして厄介な)質問は、報酬に関するもので、このような具合だ。「もし進捗が、意欲を高めるインセンティブや他の要因よりも重要であるなら、マネジャーは報酬についてはそれほど気を配る必要がない、ということなのでしょうか――進捗の支援こそが重要なのだから」。最もひねくれた質問は、「進捗の法則は、組織が給料を下げて手当をカットすることを正当化できるのではないか」というものだった。これらは誤解にも程がある。

 我々の考えでは、社員が適正な(場合によっては手厚い)報酬を受けるべき理由は、少なくとも3つある。

 第1の理由は、単純に、正しい行いだからである。

 第2の理由として、社員に十分な報酬を与えることは、企業にとっても最大の利益につながる。進捗の法則には、2つの側面がある。すなわち、有意義な仕事で進展を得ることにより、人々は満足を感じるが、同時にさらなる進展を求めるようになる、ということだ。私たちはこれを、インナー・ワーク・ライフの効果と呼んでいる。つまり、職場での出来事に対して個人が経験する感情、認識、モチベーションの絶え間ない循環である。このインナー・ワーク・ライフがプラス方向の時(業務への満足感と内発的な興味を感じ、組織を前向きにとらえている時)、社員のパフォーマンスはよくなる。創造性と生産性、責任感が高まり、周囲の人々に平等に接するようになる。インナー・ワーク・ライフの質が悪い時には、パフォーマンスは低下する。また他の研究結果では、社員が所属する企業に対してマイナスの認識を持っていると、その企業の収益力は将来的には弱まっていく可能性が高いことが示されている。

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