人を動かすことを恐れる管理職は、役に立たない

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リーダーが人を動かすということは、影響力を行使して相手の行動や思考を変えるということでもある。この役割に後ろ向きなリーダーは「悪い上司」の一典型であるという。


 典型的な「悪い上司」は、部下を怒鳴りつけながら手当たり次第に命令を下していく。しかし、悪質な上司にはもう1つのタイプも存在する――必要なことをしない上司だ。あなたも1度は出会ったことがあるのではないだろうか。

 このタイプの上司は、指針や方向性を示さない。何を求め、何を期待しているのか伺い知ることができない。よそよそしく、近づきにくい。みずから選択することができないか、選択を放棄している。こうした悪しき特徴を挙げればきりがない。

 彼らはやるべきことがわかっていない、というわけではない。原因はもっと本質的なところにある。職務上必要とされることを、やろうという「意志」がないのだ。やる気、モチベーション、自覚などが欠けている。それらは重要であるがゆえに、欠落が目立ってしまうものだ。

 数年前、クリスチャンというマネジャーはある小規模事業部を率いていた。彼は少人数のデザインチームのリーダーとして、ローラを抜擢した。ローラはこの昇格後、すぐに大きな問題に直面した。

 この事業部では、重要な新規市場をターゲットとした新しい製品ラインを発売したばかりであった。直販を主要な販路とするこの会社にとって、カタログやウェブページのデザインは売上を大きく左右する。そして、売上は予想を下回っていた。

 初動売上の結果を受け、慌ただしく分析と調査が行われた。その過程で、製品開発陣とデザインチームの間に大きな論争が勃発した。開発者たちは、新製品の販促資料が「芸術的すぎる」と指摘した。見込み客は製品とそのメリットを理解するために、この資料を注意して読みこまなくてはならない。しかし実際にそこまでしてくれる人は限られている。ある開発者は次のように述べた――「デザイナーたちは、製品を売ろうとするのではなく、デザイン賞をもらおうとしている。製品を買ってもらうことが目的なのに、イメージを打ち出すことしか考えていない」

 ローラは完全に、両者の板挟みになってしまった。開発者の主張には、インタビューやフォーカスグループのデータに裏付けられた正当なものが多かった。にもかかわらず、彼女はクリスチャンに次のように相談した。「開発者の好きなようにやらせたら、すべてのカタログが『NEW』や『コスト削減』などの売り文句や感嘆符だらけになってしまいます。プライドのある有能なデザイナーならそんな真似はしません。開発者の言うとおりのことをデザイナーに無理やりやらせたら、自分の才能を発揮せずにひどい仕事をして、やがて会社を去るでしょう。私のデザインのセンスも信用されなくなります。もしそうなったら、私は彼らにとっても、あなたにとっても役に立たない存在になってしまいます」

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