価値観、嗜好――自らの「初期設定」が意思決定に及ぼす影響

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統制か自由か、行動か忍耐か、チームワークか個人主義か――マネジャーは、日々多くのパラドックスに遭遇し難しい選択を迫られる。その際に、自分の生来の嗜好を把握しておくことが正しい判断につながるという。


 私たちは皆、仕事に自分自身を持ち込んで日々働いている。マネジャーやリーダーとて同様だ。つまり、自分の好き嫌いや先入観、価値観、気質、個性、理念、そして経験を、仕事に反映させている。

 それ自体は何も間違ったことではない。私たちは人間であり、人間性を家に置きっぱなしで仕事に向かうわけではない。しかし、自分の行動の意味を理解せずに偏見や価値観を職場に持ち込めば問題が生じる。つまり、「状況」ではなく「自分」の嗜好に合わせて行動するような場合だ。自分の望む行動が正しい選択である場合もあるが、そうでないことも多い。

前回のブログでは、ケントが得た失敗からの教訓をお読みいただいた。「あなたは“橋”を築いていません」と言われた彼は、それが的を射た意見であると即座に理解したが、それでも自分を変えることができなかった。必要とされる行動が、あまりにも自分の性分に合わなかったのだ。こうした状況では、自分に対する見方、そして自分が組織にもたらしていると信じている価値について、考えを改めることが要求される。

 自分を変えるためには、まず己を知ることが必要だ。自分の先入観や嗜好など、我々の日々の選択を左右する「初期設定」を把握しないことには、それらに翻弄され続けてしまう。しかし自分自身を理解すれば、立ち止まって次のように自問する機会が得られる――「自分は○○をしたい。でも、それは本当に最善の選択なのだろうか? 満足感は得られるが、それが最善であることの証となるのだろうか?」そうすれば、正しい意思決定を行える可能性は高くなる。

 このことは、優れた上司となるためのカギである。なぜなら、マネジメントとリーダーシップはパラドックスの上に成り立っているからだ。パラドックスとは、相反する要素を併せ持つ真実である。たとえば、「優れた上司は積極性と忍耐力を併せ持つ」「マネジメントにおいては、統制することと自由裁量を与えることが必要である」といったことだ。

マネジメントの本質は、ある状況において、相反する要素のどちらがより適しているかを判断することにある。いまは行動すべきなのか、待つべきなのか。手綱を引き締めるべきなのか、自由を与えるべき時なのか――。

 そしてここに、嗜好が関与してくる。マネジメント上のあらゆるパラドックスにおいて、私たちはどちらか一方を好む傾向にある。個人の生来の資質に基づいて、たとえば忍耐よりも行動、自由裁量よりも厳密な管理(あるいはその逆)に偏ってしまうのだ。自分の性格、価値観、そして経験に基づくこうした嗜好は、その場の状況とは何ら関係がないかもしれず、各状況における最善の選択につながるとは限らない。

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